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  [ 傷痕は誰が為の 9 ]
2010-11-02(Tue) 05:30:20
僕達は着替え、タクシーを拾ってヒロの家へいった。
「はあ‥疲れた‥」
と、ソファに倒れ込んだヒロ。
「スラックス皺になるよ?」
「カズ脱がして」
ちょいちょいと、僕のシャツをヒロが摘む。

仕方ないなあと面倒そうにしつつも、
実はイヤではなく甘やかしてしまう僕。
ヒロの服を脱がしてから僕も脱ぐ。

直後、ヒロが腕の包帯を解いた。
「ちょ、何してんの!」
「だって痒いから」
「痒くたって取っちゃだめだよ!」
僕からの注意を聞かずに、ガーゼも取ったヒロ。

そこには、ガラスで切られた痕があった。
と言ってもカッターで切ってしまったような、
2センチほどの、小さな傷。

「それが転んだ傷?」
ヒロに訊ねると、笑いながら頷かれた。

いつもなら笑い返せるのに、今日はその余裕がなく、
僕はぺちんと傷痕を叩いてやった。
「いて!カズここ怪我してんだけど!」
「ヒロを心配しすぎて、僕はもっと痛かった」

涙目で一蹴する。

途端、ヒロはしゅんと萎れていった。

「ごめん」
「許さない」

そんなふうに謝るくらいなら、
無茶しないでほしいし心配させないでほしい。
僕は、メガネを外し目元を拭った。

と、ぐいっと手を引っ張られて、
ソファに寝ているヒロに乗りかかる形になった。
「どうしたら俺のこと許してくれる?」

キスをしてくるヒロ。
そんなのにほだされるもんか。

「知らない」
「なら、カズを看取ってから俺死ぬから。
 それで許して?」

ヒロなりの謝罪らしいけど、
受けようによってはプロポーズにも聞こえる。
途端、つい照れそうになったけど堪えた。

「ね、カズ」
脳が痺れるようなヒロの甘い声。
頭はほだされまいと頑なでも、体がなぜか熱くなる。

「僕よりも先にヒロが死んだら許さない」
「判ってる」

そのヒロの手が僕の腰を撫でてくる。
怪我をして救急搬送された人物が、
軽症だとしてもセックスして平気なんだろうか、
と考えてやんわりと断った。
すると、ヒロは今までにないくらいあっさり引いた。

黙ったままソファから起きて、
「先に寝る」
とだけ言いヒロはロフトに上がっていく。
僕もロフトに上がると、ヒロは背をむけて寝ていた。

なんだか、それが寂しげに見えて。

ベッドの中に入ってその背を撫でると、
くるりと向きを変えて、ヒロが僕の肩に顔を埋める。
僅かばかり全身が震えていた。

「ヒロの意地っ張り」
「‥るさい」
なんて言いつつちょっとは怖かったんだよね。

僕にだけ晒してくれた姿。
それを包み込むように抱き締めて、キスで癒すと、
ヒロが舌を絡めてきた。
深く唇を重ね、僕の舌をヒロに押し込む。

肌に伝わる鼓動が早く感じた。
怪我のせいなのか興奮しているみたいで、
絡まってくる舌がいつもより荒い。
それでも、キスだけで空気が甘々しくなり、
とうとうこっちまで興奮してきてしまった。

やっぱりしてもいいよ、という合図のように、
ヒロに腰を擦り合わせる。
すると、ヒロは僕の腰に触れた。

強がっていて弱いところを見せてくれない。
そして、弱いところは隠そうとする。
それを共有しながら、僕はヒロと生きていきたい。

僕のそんな思いを伝えるように、
僕はヒロに抱かれ、ヒロは僕を抱いた。

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