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  [ 星が刻んだ未来さえ 9 ]
2010-11-21(Sun) 10:00:15
駅まで歩き、電車に乗って大学へ向かう。
それが、通常の日常。
バイトの時だけが俺にとっては、非日常だ。
こうしてバイトから離れてみれば、
あれは夢だったんじゃないかとさえ思える。
乱れる俺が、とても遠いものに感じる。

俺は、弟とマンションで暮らしている。
以前は、家族みんなで生活していたが、
俺が13歳の時、母は若くして病気で世を去った。
お父さんと郁央を頼むわね、と俺に言い残して。

母親に縋り号泣の父、俺に抱きついて泣く弟。
それらを見ながら涙しつつも、
これからは俺がしっかりしなければと誓った。

それから勉強と家事の両立をこなした。
父も弟も俺を頼り、俺はそれに全力で答えてきた。
叔父の勧めで和賀高へ行って、
そして有名な慶修大学の医療工学部に進学もした。

直後、父親から再婚相手を紹介された。
再婚相手と、新しいところで生活を始めるらしく、
父はこのマンションを出ていった。
仲は悪くないし連絡も常に取っていて、
先日、子供が生まれたという連絡を貰った。

郁央も俺もちょうど夏休み中だったから、
飛行機を使って父親を訪ねた。
父親と継母は、俺達のことを歓迎してくれて、
可愛い妹と一緒に、楽しい時間を過ごした。

余るほど生活費は貰っている。
暮らすためのマンションもあるし弟もいる。
不自由なことは何一つない。

郁央が例のあの事件を起こしたのは、そんな時だった。
しかし、仲間ができたからもう平気だ、
と事件の数日後に、晴れ晴れしく打ち明けられた。
とうとう俺の役目は終わった、と痛感した途端、
何をすればいいかが見つからなくなり、今に至る。

こんなバイト、いつでも辞めたいと思っているのに、
義務感なのか使命感なのか、バイトに向かう俺がいる。
誰かの役に立ちたい、その思いだけを抱えていた。

講義が終わって食堂へ行く。
壁に張られているメニューを見て選んでいると、
肩をぽんと叩かれた。
「よう、舞斗」

似合わない金髪がやけに目立つ、日比野晋平。
大学での数少ない友達だ。

「これから昼ごはんか?」
「そう。晋平は?」
「俺これからゼミだからもう食べた。
 あっちに彰彦座ってるから、いってみれば?」
目がむけられた先には、彰彦の後姿。

「うん、そうする」
「バイトの調子どうだ。あんまムリするなよ。
 舞斗はいつも頑張りすぎるから」
「何言ってんだ晋平。俺のこと買いかぶりすぎ」
「え?舞斗は皮被り?」

下ネタにパンチする俺。
それを笑って受ける、晋平。
こうやって、バカなこと言えるのは楽しい。

突然、神妙な面持ちになった晋平が耳打ちしてきた。
「あのさ、俺ちょっと頼みがあるんだけど‥」

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