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  [ 星が刻んだ未来さえ 11 ]
2010-11-24(Wed) 06:30:01
家のドアを開けると、
ぱたぱたと笑顔の郁央が玄関へやってきた。
「ただいま」
「おかえり、兄貴」
郁央は、心に抱えていたものが吹っ切れたらしく、
すっかりいつもの調子になっていた。
ただ、メールを打つ機会が増えてきて、
一緒に過ごしてしてもよく携帯を触っている。

誰とメールしているのかを訊ねたら、
仲間、とだけ言われた。
これは推測だが学校での友達ではない、と思う。
その絆の深さに、それがどこの誰なのか聞けなかった。

郁央のことをしっかり見守ってもらえれば、
別にどこの誰でも構わない。
ただ、やはりこれはブラコンなのか、
兄貴としては郁央のことが心配なわけだ。

さて、そんなことを考えながらブラコンである俺は、
晩ごはんを作ろうと、キッチンへ入っていった。
すると、ご飯はもう炊けてあり、片手鍋には豚汁もある。
どちらも出来たてで、俺は驚いて弟を見た。

「これどうした?郁央が?」
「そうだよ、俺がこれ作った」

まさかあの郁央が料理をするなんて。
ごはんも、宿題も支度も、高校入るまでは風呂だって、
俺のことを頼っていたのに。

「兄貴からちょっとずつ自立していこうかなって。
 んで、できることからやってみたんだ」
俺と同じ吊り目が、にこにこと笑っている。

「それも仲間の助言ってやつ?」
「それもあるけど、自分の意思」
どうだと言わんばかりに、鼻先を擦る郁央。

そうか、やればできるんだな。
俺はたぶん郁央の自立を喜んでいる。
それはもう母親の墓前に報告したいほどに。

けれど、俺はきっと寂しそうに笑っている。
自分の存在意義の喪失、それを改めて感じた。

そのせいか、郁央が慌てて両手を振った。
「いや、でも、これだけだから。
 全部はできないからおかずは兄貴頼むよ」

郁央は郁央で、俺のことを気にしている。
俺ががっかりすることもきっと判っていたはずだ。
だけど、弟は自分の意思で自立を始めた。
ブラコンであっても足枷になってはいけない。

「ああ、任せとけ」
とりあえず、腕まくりをしてキッチンへ立った。

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