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  [ 星が刻んだ未来さえ 17 ]
2010-12-02(Thu) 07:30:21
あれから数日がすぎた。
後にも先にも、タクシー代をくれたのは満さんだけだ。
菅生さんなんかが万札をチラつかせたら、
気持ちよくなった挙句廃人になるような錠剤を、
俺のところに持ってきそうだ。
だから、札を出されても受け取りはしない。

ありがたいことにそれもなく、
バイトではほとんど指名がつかなかった。
ほっとするような、ちょっと物足りないような、
心がもやもやした感じがした。

最近は、辞めようかと思いつつ、
また満さんがこないかなと考えたりする。
タクシー代がほしいわけじゃない。
満さんじゃないけど少しまったりしてから、
あの人と繋がりたい。

「ってわけだから、よろしくな」
「もちろん構わないよ。ねえ、舞斗?」
「え?何?」

答えを彰彦に振られ、思わず何かを訊ねた。
ぼんやりしていた俺は晋平の説明を聞いてなかった。

ここは、大学の東門。
再来週が誕生日、という晋平の彼女のプレゼントを、
買いにいくためにここに集まった。
これから、むさい男3人で出掛けるとこだ。

「だから、プレゼントを買う場所の話だっつの。
 メールで伝えてたところを辞めて、
 ちょっと遠くにしようかと思うんだけどさ」
晋平が言う場所は、満さんの店舗がある駅だった。

彼女がこよなく愛するブランドの本店が、
そこの駅の近くにある、という。
晋平は当初、大学の近くにある支店に行くつもりだった。
しかし、改めてネットで調べたら、
支店は狭すぎるみたいで品物が揃っていないらしい。

そこで、彼女にぞっこんな晋平は、
本店へ行きたいと俺達に言ったみたいだ。
行ったところでパスタ食べるわけじゃないし、
ましてや店がどこにあるかも判らない。
そもそも、ごはんを食べるかどうかも怪しい。

そういうわけで、俺は首を縦に振る。
「うん、いいよ」
「それなら早速出発しようぜ」

3人で出掛けるのは本当に久々だった。
彰武はまともなバイト、俺はろくでもないバイト、
晋平は彼女で、タイミングが合わなかった。

駅に着いて10分ほど足を進めると、
目的のブランドショップの本店があった。
さすが本店だけあり、
店舗の面積はでかいしアクセサリの品揃いも充実だ。

晋平はピアスと指輪で、かなり悩んだ。
指輪はちょっと早急だからピアスが無難だろう、
と彰彦と共に助言する。
晋平はそれを清算し、プレゼント用に包んでもらった。

周囲はカップルとセレブな風貌のおばさんばかり。
場違いな俺達は、落ち着かずそわそわと待ち続ける。
小さな包みを貰って、ようやく店舗をあとにし、
俺達は一斉に、はあっと大きく息をついた。
そして、顔を見ながらくすりと口を緩めたのだった。

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