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  [ 星が刻んだ未来さえ 19 ]
2010-12-05(Sun) 05:50:27
「いらっしゃいませ。何名様ですか?」
渋くてハスキーな声が、静かに訊ねる。
人と接する時の笑みは、前に会った時と同じだった。
きっと、これがこの人の素なんだろう。

「3人です」
満さんの問いに答えたのは、先頭にいる晋平。
隣に彰彦が立ち、俺はその後にいた。
隠れているつもりだけどたぶん見られているだろう。

「かしこまりました。それではご案内致します。
 こちらへどうぞ」
俺達は窓側の、景気のいい座席へと案内される。

店長ってこんなこともする役職なのか。
案内や配膳は店員に一任し、
お偉いさんはバックヤードでのんびり過ごす、
というイメージしかなかった。
それがまさか、ここまで覆されるとは驚きだ。

「舞斗、どうする?」
「え?何?」
デジャブだろうか、今朝と同じような返答を返した。

俺は頬杖を解き、声をかけた晋平に目をやると、
こちらに向けてメニューを広げている。
そこには、多種のパスタの写真があった。

「食うもの決まったかって聞いてんだよ」
「ああ、ぺペロンチーノにする」
「ったく。頭がぼーっとするほどバイト忙しいのか?」
晋平が言うと彰彦が笑った。

言葉はちょっと粗雑なんだけど、
晋平なりに心配してくれている発言である。
そう判っているからこそこっちも笑えた。

「バイトが忙しいのは良いことだよ。ねえ?」
「うん、まあそうかな」

どうしても彰彦に同意ができず、俺は返事を濁す。
あのバイトが忙しいなんて、考えただけで吐きそうだ。

晋平が声をかけて店員を呼ぶ。
オーダーを取りにきたのが満さんではなく、
ほっとしたような、がっかりしたような。

彰武はきのこのクリームパスタ、晋平はカルボナーラ、
俺はぺペロンチーノを頼み、伝票を書いて店員が去る。
ちらりとレジを見るも満さんはいなかった。
これにも、ほっとしたような、がっかりしたような、
なんとも複雑な心境になった。

「俺トイレ行ってくる」
席を立ち、レジ近くのトイレに入る。

まあ、どこかで鉢合わせたら挨拶すればいい。
前回のようにごく普通にな。

トイレは個室が2つあり、どちらも空いている。
右に入って用を足し、出たそこに満さんがいた。
俺は驚いて息を飲んだ。

「こんにちは。食べにいらして頂いて、
 ありがとうございます」
「あ‥あの、いえ‥どうも‥」

普通の挨拶の言葉が、真っ白になった頭に浮かばない。
俺は、動揺してしまい口篭ってしまった。

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