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  [ 星が刻んだ未来さえ 20 ]
2010-12-06(Mon) 05:10:34
「本名なんですね舞斗君」
「ええ、ニックネームが浮かばなかったので」
こういうバイトでは、みんなあだ名を使っている。
だけど、あだ名で呼ばれて、返事できる自信がなく、
俺はそれを作らなかった。
「いいお名前ですよ」
「ありがとうございます」
「頭がぼーっとするほどバイト忙しいみたいですが、
 大丈夫ですか?」
「いや、あれは‥」

満さんのことを考えていました、とは言えず、
ここで再度口篭った。
困った俺に、くくっと満さんが笑う。

「すみません、これは嫉妬ですから。
 気にしないで下さい」
俺をちらりと見て、満さんはトイレを出た。

前にもやきもち妬きそうだとか言ってたっけ。
俺ってもしかして満さんのタイプなんだろうか。
俺も満さんのことは別に嫌いではないけど。

答えの出ない考えは嫌いだ。
考えるのを止めて、俺はさっさとテーブルに戻る。
すると、間もなくパスタが運ばれてきた。

皿を運んできた店員と入れ替わるように、
満さんがローストビーフのサラダを持ってくる。
もちろん、サラダなんて誰も頼んでおらず、
晋平と彰彦は、きょとんとしている。
そんな中、満さんの視線は俺にあった。

「サラダなんて頼んでません」
「私からのサービス品です。
 みんなで食べて下さい、舞斗君」
最後の一言に、2人の目が一気に刺さる。

くそ、やられた。

何かされそうな気はしたけど、こうきたか。

満さんと俺のことを、フォローしなければ。
そんなことを考えていた俺に、
にこりと笑った満さんが去っていった。

「え?舞斗の知り合い?」
「あ、うん。遠い親戚の人」
「そうだったんだ。もっと早く判ってたら、
 こっちから挨拶できたのに」
「そういうの気にしない人だから」

とにかく、冷めないうちに食べようぜ、
とパスタに食いつくと、2人もパスタに集中した。

実は俺、サラダをオーダーしようとして、
何となく止めた。
だからこそ俺は知っている。
ここに、こんなサラダなんてないことを。

役職を利用し満さんが作った、オリジナルのサラダは、
文句のつけどころがないほど美味かった。

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