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  [ 星が刻んだ未来さえ 23 ]
2010-12-13(Mon) 06:20:30
そのうち、飲むペースが上がってきた。
俺は、梅酒がようやく5杯目になるところで、
満さんはもう6杯目が終わりかけている。
もつ鍋はとっくに空になり、
余ったオードブルやサラダを食べていた。
飲みながら話したのは、クラシックのこと。
満さんが好きらしく、とにかく詳しかった。
俺にはクラシックなんて縁のないジャンルだけど、
バイトしている理由を質問されるよりマシだし、
満さんが喋っていて楽しいなら、それで構わない。

時々、休息かのような沈黙になる。
だけど、そんな空気さえも心地よかった。
満さんも同じだと嬉しい。

やがて、満さんが腕時計を見てから、俺を見た。
「もうちょっとで3時間になりますね。
 そろそろ出ましょうか」

酔っても笑顔の満さんが、店員を呼び清算を頼む。
店員が運んできた煎茶を飲み、満さんに俺は言った。
「俺もここ払います。いくらですか?」

俺がこんなこと言うなんて思いもしなかったのか、
目を大きくさせてから手を振られた。
「いいですよ、誘ったのは私ですから」
「いや、俺もかなり飲み食いしましたし」

財布を出すも右手で制され、こう言われた。
「それなら、次からお願いします」

満さんはまた誘ってくれるだろうか。
こっちからも、飲みに行こうと誘いたい。
だけど、いかにも営業っぽくて抵抗があるし、
満さんにそう思われるのもイヤだ。

俺の考えを汲み取ったのか、満さんが頷く。
ここは満さんを立てて、奢られることに俺はした。

「それじゃあご馳走になります」
「飲みにまた誘っても構いませんか?」
「もちろんです」
言うと、満さんは嬉しそうに笑った。

清算を終わらせて鍋屋を出る。
アルコールで火照る全身に夜風が気持ちいい。

と、俺はふらついて満さんに凭れてしまった。
「すみません」
「タクシー拾いますか?」
「いえ、大丈夫です」

満さんに凭れるのが、とても気持ちいい。
飲んだせいか人肌が恋しくなり、
俺は満さんにすりっと顔を擦りつけた。

ああ、やばい。
満さんと離れたくない。

「足だけじゃなくて頭もふらついてますよ。
 タクシー拾いますから、待ってて下さいね」
慌てたように言い、満さんは道路を見やった。

いやいや、ふらついてんじゃなくて、
満さんにわざと顔をなすりつけてます。
仕草がいかにもわざらしいから気付くはずだけど、
鈍感なんだか計算なんだか天然なんだか、
ちょっと掴めない人だ。

そんな間にも、満さんはタクシーを拾った。
俺を後部座席に乗せ、満さんが笑う。

ねえ、きてよ満さん。

強く満さんの服を掴んだ。
黙ったままお互い、じっと見つめ合う。
目からの訴えが通じたのか、隣に満さんが乗り込み、
ドライバーに行き先を告げた。

始めて耳にする、地域名。
満さんの家があるのだと何となく判った。

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