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  [ 星が刻んだ未来さえ 47 ]
2011-01-25(Tue) 06:30:03
「そろそろ出ましょうか、舞斗君」
あっという間に時間は過ぎていき、
ここにきて180分が経とうとしていた。
「あの‥満さん‥」
「どうしましたか?」
「さっきの話を聞いて俺を呆れたり、
 イヤになったりしませんでしたか?」
「しませんよ。そんなに私の評価が気になります?」

気になるに決まっている。
些細なきっかけでバイトをした俺自身のこと、
満さんはどう捉えたんだろう。
バカだと思ったか、バカにすら値しないと思ったか。

「‥少しは」
俺はそう言わず、自嘲気味に笑って答えた。

「過去は誰だって変えられませんが、
 未来は誰にでも変えることができます。
 過去を悔やんでいるなら未来を良くすればいい、
 というのが持論ですから」
これでも元暴走族なので、私なりにそう悟ったんです、
と笑う満さんは付け加えた。

「それとも私に呆れてほしかったですか?」
「いや、そういうわけでは‥」

呆れられなくて良かった。
だって、好きな人には嫌われたくない。
嫌われたくはないけどウソも言いたくない。
言葉を嚥下し、俺はドアの前にむかった。

「これから店に顔を出してきます。
 どこかで待っていて下さい」
「じゃあ、近くのコンビニで待っています」
「はい。すぐにいきます」

靴を履き、先にラブホを出た。
鬼塚さんに挨拶にいくと、いつも通り笑っていた。

「気がむいたら遊びにきてよ」
「辞めてもここに遊びにくる人っているんですか?」
「いるいる。俺ってこうだから遊びやすいみたい」

缶コーヒーを飲みながら笑っている、鬼塚さん。
パソコンの手を止めて俺を見つめると、にやりとした。
「俺のこの緩さが、なかなか受けるみたいでさ」

なるほど、それは判る気がする。
鬼塚さんと会話すれば、張り詰めた心が緩くなるし、
もやもやした感情とかイヤな気持ちがリセットできる。
この人なら、スルーもしてくれるし受け入れてもくれる。
程良く都合いい、という感じか。

鬼塚さんにとってのセックスはスポーツ感覚なんだろう。
だから、俺のことを襲ってきたのも、誰とでも寝るのも、
好きだからとか嫌いだからじゃなくて、
スキンシップのような感じなんじゃないだろうか。

広い世の中に、こういう人もいるんだ。
それがいいか悪いかは別としても、
もうちょっと俺の同意を確かめてほしかった、と思う。
まあ、過ぎたことを悔やんでも、しょうがないけど。

「そうなんですか。それなら今度遊びにきます」
社交辞令で言うと握手を求められ、俺はそれに答えた。

それから、バイト代を受け取って、マンションをあとにする。
すると、マンションの出入口に人影があった。

ゆらりと見えたその顔は、菅生さんだった。

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