BLUE BIND

BL小説ブログ。危険を感じた方はお逃げ下さい。
  [ 星が刻んだ未来さえ 49 ]
2011-01-28(Fri) 06:40:23
それは細長い注射器だった。
透明の怪しそうな液体が入っている。
「経口摂取の次は静脈注射を、と僕なりに考えてね」
くく、と菅生さんが微笑む。
あんなもの注射されたら廃人になりかねない。

俺は、これまでケンカをしたことがない。
痛いのも傷めるのも、どっちもイヤだからだ。
だけど、そんなこと言ってる暇なんてない。

やるか、やられるか、だ。

防御のためショルダーバッグを左手に、
攻撃のために右手を、静かに構える。
ごくりと喉を鳴らしながら間を詰めていった。

まずは、注射器を叩き落す。
それから、菅生さんのカバンを奪取し、
ここから脱兎するという作戦だ。
そうすれば俺を追ってはこないだろう。

その時だった。
菅生さんの背後に、大きな影ができ、
その影が菅生さんの右手を掴んだ。

「いたたた!」
かしゃん、と音がして注射器が落ちる。

「あなた、これで何をする気ですか?」
その声の低さと、その影の大きさ。
そこにいたのは満さんだった。

満さんを睨り、菅生さんは怒鳴りつける。
「誰だお前!」
「あなたのほうから名乗ってはどうでしょう?」
「うるさいな!誰なんだよお前…いてて!」

ぎり、と満さんが菅生さんの右腕を捻っている。
容赦無い力加減、それなのに笑顔はいつものもの。
それが何だかとても怖かった。

「大丈夫ですか舞斗君?」
「‥は‥はい」
「そうですか。それならよかったです」

と言い、満さんは注射器を踏みつける。
それは一瞬で粉砕された。

「っと、すみません」
「すみません、じゃないだろう!
 器物破損で、今すぐにでも訴えてやる!」
「わざとではありません」
「わざとじゃなければいいのか!」

菅生さんの大声に、満さんは怯まない。
それどころか勝気に微笑んだままだ。
「それでは、どうぞ訴えて下さい。カンツリの菅生さん」

瞬間、菅生さんが蒼白になった。
満さんは菅生さんの様子を眺めながら、
ハンカチを取り出し注射器を拾い集めている。

集め終えたものを差し出して、満さんは言った。
「何なら今から、これカンツリに持ち込みましょうか?」

その言葉にかっとなった菅生さん。
やけくそのように、拳を満さんへ振り上げる。
満さんはそれを読んでいたのか、拳をさっと避けると、
菅生さんの胸倉を、ワイシャツを破かんばかりに掴んだ。

次話へ 前話へ

お気に召しましたら一票お願いします。
にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
BL小説星が刻んだ未来さえ | TB:× | CM : 2
星が刻んだ未来さえ 48HOME星が刻んだ未来さえ 50

COMMENT

このコメントは管理人のみ閲覧できます
b y | 2011.01.28(10:31) | | [EDIT] |
  +
コメント下さったK様

こんにちは!コメントありがとうございます!
実は今回のお話で一番書きたかったシーンが、
菅生が迫り、舞斗がピンチになり、そこに満が登場する、
ずばりこのシーンになりますo(^▽^)o
なので、K様のコメントとても嬉しかったです♪

舞斗のバイトはそんなに危なくないと思います。
でも菅生みたいに、執着心の強く思い込みが激しい人が
相手だったらやっぱり危険ですよね(´∀`;)
そういう意味も込めて菅生というキャラがいるので、
お話をお読み頂いている皆様が菅生の言動に「いらっ」と
してもらえたら嬉しいなと思っております(笑)

そうですね、舞斗が満のマンションに行きましたから、
このまま上手くいくといいですね。
その辺りはもうちょっとハラハラして頂きたいので、
続きをお待ち頂けると幸いです(=^_^=)

ああああああ。お名前の件、大変失礼しましたm(_ _;)m
そう言って頂けて、ほっと一安心です。
今後は気を付けます。ありがとうございます!
b y 水色 | 2011.01.30(04:55) | URL | [EDIT] |

COMMENT POST

:
:
:
:



 
 管理者にだけ表示を許可する


copyright © 2024 BLUE BIND. All Rights Reserved.
  
Item + Template by odaikomachi