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  [ 青い空を見上げて 24 ]
2010-06-09(Wed) 17:40:56
笹崎侑津弥


土曜の早朝。
仁さんと藍さんは、アリゾナに戻っていった。
ジョーと俺は空港へ見送りに行こうとした。
だけど、玄関前に呼んだタクシーに荷物を詰めながら、
仁さんにやんわりと断れた。

今回の帰国の理由は、
大切なシンポジウムが日本であったからだという。
ちなみに、シンポジウムに用があったのは仁さんだけで、
藍さんは付き添いとして、休みがてら日本に戻ったらしい。

「旅費を出すからいってこいと上司に言われてね、
 それはもう喜んで戻ってきたのさ」
「タイミングが良かったわ」
「そうそう、タイミングも運のうちだからね。
 笹崎君、これからも何かあった時には、
 電話でもメールでもいつでも遠慮せずしてきなさい」

仁さんはそう言って、俺にメモを渡した。
そこに書かれた番号やアドレスを見ていると、
こっそり耳打ちされた。

「城の件は、多少ばあちゃんに力添えしてもらったよ。
 城はやっぱりいい顔しなかったけどね、
 笹崎君を巻き込む可能性を、あいつなりに考えたらしい」

にししと仁さんは笑った。
俺は、言ってる意味が判らなくて、きょとんとした。

「‥それ、どういう意味なんですか?」
「おや?あいつから何も聞いてないのかい?
 それなら後で聞いてごらん。ちゃんと教えてくれるから」

アリゾナにも遊びにおいでね、と言い、
仁さんと藍さんは、タクシーで空港へといってしまった。
タクシーの姿が見えなくなって、ジョーに聞いてみた。

ケンカの相手がどうやらお礼参りという仕返しをするのに、
街中や各学校を徘徊し、ジョーのことを探し回っていたらしい。
だけど、ジョーはアリゾナに行っちゃったし、
帰国後は、顔を合わせないように気を付けていたみたいだ。
先週の金曜は、ジョーの警戒及ばず鉢合わせしたけど。
 
で、ジョーのおばあさんが、突然登場。
どうやら、相手方をかなりきつく警告したらしい。
これで、大手振ってジョーも出歩けるみたいだ。

けど、ジョーは浮かない顔だった。
「結局、頼りたくないのに頼っちまったけど、
 でもこれで、ウツミをもう巻き込むことはないだろうし、
 結果オーライってポジティブ思考でいかないとな」

ジョーなりに大変な苦労があるくせに、なぜか、
いつも俺を優先に物事を考える。
照れるから言わないけど、俺はそれが嬉しかった。

リビングに戻ってテレビを見ると、
早朝の通販番組が終了し、ニュースと天気予報がやっていた。

晴天、絶好の引越し日和だ。

「荷物まとめるの手伝おうか?」
「‥いい。あんまり荷物ないから。
 業者のトラックで戻ってくるから待っててほしい」
「判った。待ってる」

俺はジョーと朝ごはんを食べてから、家を出た。

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