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  [ 星が刻んだ未来さえ 60 ]
2011-02-18(Fri) 06:25:40
穏やかに笑っている、菅生さん。
セックスの時のおかしさなんて感じられない。
それに安心しながらありがとうという言葉に、
俺は首を横に振る。
頬を赤らめながら口を綻ばせると、
菅生さんの携帯がメールを受信した。
チェックして真顔になった菅生さんだったが、
諦めたように笑う。

「こんな立場ではないが、
 どうかこのお願いを聞いてもらえないかい?」
真っ直ぐに俺を捉える、真摯な眼差し。

こんなにもいい顔でおかしなことを言うはずがない。
そんな確信があり、俺は無言で頷く。
菅生さんは安堵したのか、ほっと肩の力を落とした。

「先にカフェを出ていくから、
 ここに10分間残ってほしいんだ」
それきりもう俺と会わないつもりだろう。
菅生さんはそう決心したような表情をしている。

俺は、静かに頷いた。
すると、菅生さんは感謝するように微笑んだ。

「会わないって約束を破ってごめんよ。
 今後一切、マイト君には関わらないから。
 それじゃあ、さようなら」
菅生さんが、ブレンドを少し残して立ち上がった。

このまま別れて終わりになる。

それでいいのか。

いいのかなんて判るわけがない。

判るわけがないけど俺はどうしたいんだ。

俺は、伝票を取った手首を掴んでいた。
振り返った驚き顔に、何も考えずに俺は言った。
「またどこかで会ったらお茶しませんか?」

そうだ、これでいいんだ。
いつかまた、どこかで会った時、
元気なのかどうかだけでも確認できれば。

形はどうあれ縁があったから会うことができた。
そういうのを大切にしていきたい。
例えそれがガキっぽい考えだとしても。

「いいのかい?」
「はい」
「マイト君は本当に優しいね。ありがとう。
 それじゃあ、またいつか」
「はい。またいつかどこかで」

菅生さんは微笑んで、カフェを去って行った。
怖いこともあったけど俺はこれでよかったと思う。

さて、冷めたブレンドを飲みながら、
いつものように暇潰しにテトリスをやろう。

俺は携帯を手に、テトリスをプレイする。
ブロックが重なってきた頃、店がちょうど混んできた。
そろそろ約束の時間にもなる。
ブロックがグレーに染まってエンドマークが出ると、
横からこう声をかけられた。

「ここいいですか?」
相席を求めるほど店内は混んでいた。
俺は携帯を畳み、慌てて立つ。
「あ、はい。俺もうここ出ますから」

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