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  [ 星が刻んだ未来さえ 61 ]
2011-02-19(Sat) 05:40:56
横にいたのは満さんだった。
数年間、会うことはないと思っていたその人が、
まさに目の前にいる。
これは、一体、どういうことだ。

魔法をかけられたように硬直した、俺の体。
体が動かなくて逃げ出せない。
それどころか、声も出なくて何も言えない。

固まったままの俺に、満さんは笑う。
「こんにちは、舞斗君。ここいいですか?」

何度も耳にしてきた柔婉な声。
そのいつもの声が魔法を解いてくれたのか、
声だけはどうにか発せるようになった。

「あ、はい。俺もうここ出ますから」
「せっかくですし私と少し話をしませんか?」

話すことなんて満さんにはあっても俺にはない。
そもそもここで会ったのが信じられないくらいだ。

満さんとは会わない、満さんから離れるべき。
改めてそう誓いながら、俺は首を横に振る。
だけど、満さんはそれに従ってくれない。
それどころか、諦めないと言わんばかりに迫られた。

「ここでする話ではありませんから、
 車を転がしながら少し喋りましょう」
近くのコインパーキングに車がありますから、
と俺は満さんに手を繋がれて、そこへ向かった。

それを振り払えず、導かれるがまま歩いていく。
むしろ、その手の温もりに心が熱くなり、
ずっとこのままでもいいか、とさえ思っていた。

停めてあったホワイトパールのセダンに乗せられる。
運転席の満さんが助手席の俺に、
傾きながらシートベルトを施してくれた。
それから、慣れたようにイグニッションキーを回す。

珍しいことにこれはマニュアル車だった。
免許はないけど一応男だし、見ればそれくらい判る。
やっぱり元暴走族だけあって、
オートマチックの加速では満足できないのか。

マフラーが唸り声をを上げる。
クラッチを踏んでギアをファーストに入れ、
隣の満さんは車を走らせた。

たぶん、話をするために走らせているだけで、
どこかへ向かっているということはないと思う。
国道の流れていく風景を見ながら、
何を喋ったらいいのかと俺は困っていた。

すると、先に満さんが口を開いた。
「さようならとは、どういう意味なんですか?」

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