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  [ その手はひとつじゃない 2 ]
2011-03-07(Mon) 07:40:40
「おかえり、郁央」
「兄貴、ただい‥ま‥」
満さんを見て、かちんと硬直してしまった郁央。
見たことも聞いたこともない人が、ここにいるんだ。
郁央がびっくりしても不思議ではない。

固まって動かない弟に、満さんは優しく笑って、
ぺこりと軽く頭を下げる。
郁央は、俺の隣へやってきて後に隠れてしまった。

「隠れて何してんだよ」
「だ‥だって‥」

昔から弟は、怖くなったり驚いたりすると、
さっと俺の後に隠れる。
たぶんだけど現状の把握に時間がかかるんだろう。
これだけは小さい頃から変わらない。

そんな行動に微笑みながら、弟の傍へと寄る満さん。
「初めまして。楠満です」

満さんが優しく言うと、郁央はようやく会釈して、
そろそろと俺の後から姿を現してきた。
「初めまして。仲村郁央です。
 あの、兄貴の友達‥なんですか‥?」

問いに対して、満さんは笑っただけ。
それを説明するのは、これからだ。

「郁央、ちょっと話があるから座ってくれる?」
俺の言葉に郁央は頷き、イスへ座った。
向かいに俺が、隣に満さんが腰を下ろす。

「最近、調子どうだ郁央?」
「は?何の?」
「バイトとか恋愛とかの」
「ああ、うん、まあそこそこだよ」
「良いのか悪いのか判らないな」
「良くもないし悪くもない。あんまり進展もないし。
 それよりさ、人がいるのにそんな話しないでくれよ」

郁央は赤面し、満さんをちらっと見る。
弟と満さんは目が合い、互いににこりと笑った。
そんな様子に軽く嫉妬しつつ、冷めたコーヒーを飲んで、
俺は静かに切り出した。

「あのさ、ちょっと報告あるんだけど」
「うん、何?」

俺は満さんの目を見る。
同時に頷いてから郁央に告げた。
「今、俺は満さんと付き合ってるんだ」

弟の目が、大きく広がった。

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