BLUE BIND

BL小説ブログ。危険を感じた方はお逃げ下さい。
  [ その手はひとつじゃない 7(完) ]
2011-03-17(Thu) 08:00:06
俺達を呼びに郁央が来たのは、それから1時間後だった。
ダイニングに行くと、テーブルには食事が用意されてある。
もちろん、宣言したレアチーズも置かれてあった。
「すごいご馳走ですね」
呟いたのは満さんだった。
3人で食べきれないほどの料理が並んでいる。

「2人のために頑張りました」
「そうですか。ありがとうございます」

満さんが郁央に笑いかける。
眩しい笑顔に照れて、郁央はちょっとだけ赤面した。
なんか、少し妬く。

「温かいうちに頂きましょう、舞斗君」
「あ、はい」

満さんがイスを引いてくれて、そこに座った。
満さんと郁央も座って、食卓を囲んで3人で食べる。

久々の、家庭的な雰囲気に、
俺はくすぐったいような嬉しいような、
表現できないおかしな気分になった。
たぶん郁央もだろう。
そわそわして落ち着いておらず見て判る。

ホ生クリームとクリームチーズで作られた、
ふわふわのレアチーズケーキは、とても美味しかった。
満さんが、それを絶賛する。

「郁央君は将来、パティシエになれますよ」
「いやだなあ、そんなのムリですよ」

照れ笑いしながら頭を掻く、郁央。
どうやら、まんざらでもなさそうだ。

「郁央パティシエ目指してみれば?」
「その気になるから言わないで、兄貴」
「あ、そうか、バイトには好きな人がいるもんな」

言うと郁央は赤くなった。
「ちょ‥やめてよ、満さんがいるのにそんな話」

赤面している郁央はやっぱり可愛い。
って、俺はまだブラコンが抜けないみたいだ。
俺達のそんな様子を、満さんが楽しそうに見ている。

「いいじゃん。郁央の片思い、満さんに話してるし」
「マジで?それは著作権法違反じゃん」
言ってみんなで笑った。

「大変でしょうけど応援しています、郁央君」
「ありがとうございます」
「郁央君が動くべきなので私達は何もできませんが、
 いつでも手は差し伸べますからね」

満さんが言うと、郁央ははっとした表情になった。
そして、泣きそうなほど嬉しかったのか、
じっと満さんを見つめる。

「どうした、郁央?」
「いつでも手を差し伸べるからって、
 前にもちょっと言われたことあって‥」
「仲間って人達?」
訊ねると郁央は頷いた。

「たくさんの手があれば励みになりますね」
「そうですね。応援してるからな郁央」

得意そうな笑顔になる、郁央。
確かに、差し伸べられる手は多いほうがいい。
多ければ多いだけ、心強いしそれが勇気にもなる。

「‥もっと早くみんなと会えたらよかった」
突然、弟はそう呟いた。

悩みを話せる人がいれば、こんなにも思い詰めなかったし、
学校にだって侵入しなかった、という意味だろう。
過去は変えられないし無かったことにもできない。
もちろん郁央だけではなく、満さんにも俺にも言えることだ。

「今こうやって会えたことに、きっと意味がある。
 過去は変えられないけど未来は変えられるんだから、
 これから頑張ればいいって」

俺達もそうだったからきっと大丈夫。

ねえ、満さん。

と満さんを見ると、こくりと頷いてくれた。

俺と満さんからのメッセージを受け取ってくれたのか、
郁央はえへへと微笑んだ。
「そうだね。ありがとう」

俺達はその笑顔に、笑って返した。

前話へ

無事(?)にカミングアウトができた、
舞斗と満のお話でした(*^^*)


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COMMENT

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b y | 2011.03.17(12:52) | | [EDIT] |
  +
コメント下さったK様
こんにちは!コメントありがとうございます!
星刻番外編で幸せな気持ちになって頂けて嬉しいです。
こちらこそありがとうございましたm(_ _)m

舞斗と満は甘さ全開でラブラブモードです。
満の前では可愛く、弟の前では逞しい、
そんな舞斗の様子が伝わって安心しました(´▽`;)
プロットが完成したら郁央のお話にも着手しますので、
着手した際はハッピーエンドになるよう頑張ります(笑)

気持ちがふわんとしただなんてそんな‥(ノД`)
最高の褒め言葉です。あああありがとうございます!
下書きを書いている最中に余震を感じることもありますが、
少しずつでもブログを更新していけたらと思います。
K様もどうかお体ご自愛下さい(*^^*)

拍手を下さったM様
こんにちは!コメントありがとうございます!
レス不要とのことですがお返事してしまいました(^▽^;)
コメント頂けたのが嬉しくてつい‥すみません‥。

こちらこそ星刻番外編にお付き合い頂き、
本当にありがとうございました。
お陰様でようやく舞斗と満のお話が終わりました。
本編では付き合うまで、番外では付き合った後を少し、
という予定で連載当初から動いておりましたので、
すっきりしたと言うかほっとした感じがします(=^_^=)

過去は変えられないけど未来は変えられる。
まさに今の現状にぴったりの言葉ですね。
被災者の方々は本当に大変な状況かと思います。
だからと言ってこちらでできることも限られていて、
歯痒い状態が続いておりますが、
1人でも多くの方が無事であることを祈るばかりです。

本日、1時間歩いてホームセンターまで出向き、
どうにか自転車をゲットできました(*´∀`)
ブログ名・HN・テンプレ等でお判りの通り、
私は水色・青系が大好きなのです♪
自転車もできれば青系がほしかったのですが、
ホームセンターではシルバーと黒しかなかったので、
泣く泣く黒を購入して参りました(^^;)
ご心配頂きありがとうございます!
b y 水色 | 2011.03.19(04:32) | URL | [EDIT] |

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