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  [ 笹崎侑津弥の恋愛相談室 5-2 ]
2011-03-24(Thu) 06:50:23
受付番号5:井出風音(青い空を見上げて)
※ウツミによる行動描写があります
※少々NLネタにつきご注意下さい
「‥荒本が、ごめんって言ってたよ、と」
夕食後、ソファに座ってメールを作った。

結局、こんな普通のメールの文章になった。
というか、これ以上もこれ以下もない。
えいっとメールを送信すると5秒もしないうちに、
井出から返信がきた。

今からウッチと話せないかな、という一文だった。

これって今すぐの話だろうか。
キッチンに立ち食器を洗っているジョーへ、
ちょっと部屋行ってくる、と言って2階へ上がった。
そして、いいよと返事をすると、
先程同様、5秒もしないうちに着電した。

「‥はい」
「あ、ウッチ?いきなり電話してごめんね」
「‥いや、平気」

クラスメイトと電話をするのは、これが始めてだった。
新鮮なような不思議なような、おかしな感じがする。

「康太、あれからどうしてた?」
「‥すごく落ち込んでた。がっかりしてたみたい」
「ビンタされて怒ってたでしょう?」
「‥それはない、と思う」

電話で井出が、はあっと溜め息をついた。
どうしたのかと訊ねるべきか迷っていると、
井出に、こう切り出された。

「ウッチ、ちょっと相談乗ってもらえる?」
「‥え?何の?俺でいいの?」
「男子の気持ち、みたいなの聞きたいの。ダメかな」
「‥いいよ、俺でいいなら」
机のイスからベッドに移り、そこへ座った。

「私、少し前くらいから康太と付き合ってるの」
「‥そうなんだ」
「あんまり驚かないね」
「‥だって、お互いに名前で呼んでた」

あははと、明るく井出が笑った。
元気そうな声色に、俺もふっと笑った。

「きっかけはクラス委員になったからなの。
 康太ってマジメで誠実で、背は私よりも少し低いけど、
 そういうの関係ないし私から告白したのね」
「‥そっか」
「だけど、康太も私もちょっと部活が忙しくて、
 なかなかデートとかできていないの。
 メールはしてるんだけど、康太のメールの文章、
 ああとかうんとか返事ばっかりだから、
 それイヤなのって伝えたらメールしないって言われて‥」

明るかった声が、トーンダウンしていく。
鼻の啜る音も、ちょっとだけ聞こえてきた。
さっきのことを思い出し泣いてるらしい。

「それで言い合いになって‥私‥」
ぐすん、と聞こえた。
励ましの言葉が浮かばず、じっと聞いていた。

「何でメールくらいでケンカしちゃうんだろう。
 男子ってメールが億劫なの?うざい?ウッチはどう?」
「‥え?俺?」

俺、ジョーとメールなんて滅多にしないからな。
でも、長文でくれば嬉しいけど返信はなんか照れるから、
やっぱりつい文が短くなるかも。

それを伝えると、井出は、すっと息を吸い込んだ。
「そう‥なんだ‥」
「‥うん。でも、照れるからとか恥ずかしいとか、
 好きだとやっぱり言いにくい。
 言いにくくて荒本も困ったのかもよ」
「どうして?好きだから何でも言えばいいのに」

井出のこういう直球なところが、長所であり短所である。
でも、人はそれぞれ考え方が違うわけだ。

「‥井出も荒本も、俺もそれぞれの考えがあるから」

はっと息を飲んだような声が聞こえた。
そして、数秒ほどの沈黙。
もしかしたら電話切られたのかも、
と思ってしまうほどの静けさだった。

「ウッチは大人なんだね」
ぽつりと、低く井出が呟く。

「‥それはない」
「ううん、ちゃんと人の心に寄り添ってるもん。
 私どっかで焦ってたのかな。
 康太に自分の意見‥あんなに押し付けちゃって‥」
「‥今そういうふうに思ったんだったら、
 これから考えを変えればいい」
「できるかな、私に」

できるよ、という言葉をたぶん期待している井出。
クラス委員で成績もよくて、人望の厚い井出も、
人にこうやって押してもらいたくなる時があるらしい。
意外な気もしたけど当然な気もした。

「‥できるよ。俺もそうやって変われたから」
「え?ウッチって付き合ってる女の子いるの?」

しまった、と思っても遅い。
これは完全に失言だった。

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