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  [ 青い空を見上げて3rd 21 ]
2011-04-28(Thu) 06:20:29
阿久津城


ウツミが撮影してから、1週間後。
朝ごはんを終え、家を出るために靴を履いていると、
ウツミの携帯が着信した。
この着信音はメールじゃなくて電話だ。
「朝っぱらから誰だ?」
「‥なんか波多野みたい」

ウツミは光っているディスプレイを見せてくる。
波多野夏樹、とフルネームが表示されていた。
って、いつの間に連絡先を教えていたんだ。
まあいいんだけど、なぜか妬いてしまう俺がいた。

出ようかどうしようか困っているウツミに、俺は言う。
「とりあえず出てやれよ」
「‥うん。もしもし」

ウツミの逆に耳を当てて、俺も会話を聞く。
ないだろうけど早朝から告白とかではあるまい。
そうだとしても、ウツミは断るだろうけど。

「ウツミ?おはよう」
「‥ああ、うん、おはようナツ」

おいおい、ちょっと待てこら。
いつからお互い名前で呼んでんだよ。
ってかそんなに仲良かったっけ。
くそ、話が終わったらウツミに詰め寄ってやる。

「悪いんだけど今からメールするもの見てくれ。
 またすぐ電話するから」
ぷつん、と切れてすぐにメールが送られてきた。

ちょっと栄えてる駅のビルに飾られた、
ポスターの写真の画像が添付されている。
それも1枚や2枚ではなく、
街をジャックしたかのようにたくさん貼られてあった。

そのポスターに写っているのは、ウツミだった。

ウツミは目を大きくした。
「‥ウソ‥こんな感じになるって聞いてない」

確かにウツミは言っていた。
バイトで撮影したものは、ポスターになっても、
メーカーの店に張られるくらいだと。
そんな大袈裟な広告に起用されない、とも。
だけど、今こうして違うことが起きている。

またすぐ波多野が電話してきた。
「見たか?何だこれ?これウツミだよな?」
「‥う‥うん」

俺はウツミを玄関外に促してやる。
説明するんだったら歩きながらでも可能だ。
波多野もきっと登校中だろうし、
このままだと俺達が学校に遅刻してしまう。

ウツミは歩きながら、
俺にしてくれたのと同じことを伝えていた。
そして、ウツミは通話を終了させた。

「波多野、何だって?」
「‥すごい心配してた」

サインを強請るでもなく心配するとは、
マジメな波多野らしい。
体育祭で、土下座せんばかりの謝罪をしてきたのを、
ふと思い出した。

「そうだな、あれが知れ渡ったらまた呼び出されるな」
「‥うん」
「どうすんだ?とりあえず考えたほうがいいぞ」
「‥何を?」
「教頭への説明だよ」

ウツミは唸るような顔をしてから、
ぱったりと黙ってしまった。
まさかこうなるとは思っていなかったんだろう。
狐につつまれる、とはまさにこういうことだ。

聞いた話だと、教頭はそんなに反対していない。
ウツミの家庭の事情を把握しているから、
というのが最大の理由だろう。
そこを考慮すると、怒られることはないと思う。
怒られなくても説明は要するだろうけどな。

登校中、ウツミは俺に隠れるようにして隣を歩いた。
ウツミに詰め寄るのは、あとでにしよう。
そう思いながらウツミの顔を、じっと見つめた。

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ウツミとナツ、ジョーの知らぬ間に名前で呼び合ってます(笑)

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