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  [ 青い空を見上げて3rd 28 ]
2011-05-15(Sun) 05:45:19
阿久津城


「‥ジョー、誰?」
「バカ、ウツミ失礼だろうが」
本人を目前に、ウツミは俺の服を引っ張りながら、
静かにこんなことを訊ねてきやがった。
俺にしては珍しく焦ってしまい、その口を手で塞いだ。
すると、あははと伊吹が爆笑をした。
腹を抱えながら涙を流して、苦しそうに笑っている。
怒りを通り越したか、それとも呆れ返ったのか、
伊吹がどんな性格だろうとも、
ウツミの発言でいい気分はしない。

なんにしろ、ウツミの失礼な発言を謝罪するために、
俺は深く頭を下げた。
「すみません。こいつに悪気はないんです。
 疎いあまりに伊吹さんが有名なこと知らないだけで」

ウツミはようやく自分の失態に気付いたらしく、
俺と同じように頭を下げた。
「‥すみませんでした。
 あの、今日は、宜しくお願いします」

謝るくらいなら誰なのかなんて聞くなっての。
とウツミに呆れていると、伊吹さんの右手が、
ウツミを肩と俺の肩を叩いてきた。
「お前ら、最高」

緩いデジタルパーマの髪を、ふわふわと揺らしながら、
伊吹さんは笑いながら青柳さんに声をかけた。
「さすがだな、四葉」
「だろう?」
「スウはかなりの逸材じゃんかよ」
「そうだね。伊吹を目の前にして誰か聞くくらいだし」
「あはは。もうそれやめろって」

思い出したかのように再び笑った、伊吹さん。
残りの涙を拭って、ぽつりと呟くように言った。
「それにしても、サイン強請られたり、
 迫られたりしないのはこれが初めてかもな」

言った意味が判らず、ウツミと共に首を傾げると、
桂馬さんがライトをずらしながら伊吹さんをフォローした。
「伊吹はモデル仲間からもサインを強請られるんだ。
 本人は、それがイヤなんだってさ」

なるほど、だからウツミの反応が斬新だったってわけか。
ウツミはまだ意味を理解できないのか、きょとんとしていた。
伊吹さんがモデルとして有名なこと、
ウツミがサインを頼まなかったのが嬉しかったことを、
理解できるようにゆっくり説明してやる。

ようやく判ったのかウツミはまた謝った。
「‥すみませんでした」
「もういいから。こっちこそ久々に爆笑したしさ。
 スウ、今日はいい撮影しような」
「‥はい」

伊吹さんとウツミが握手した。
そこを、青柳さんがすかさず撮影する。

「おいおい、四葉、まだなんも準備してないって」
「判ってるけどいい顔してたから、つい」
「ったく、これだよ。どこまでカメラバカなんだか」

カメラバカと言われても笑っている、青柳さん。
これは大人の対応ではなく、きっと言われ慣れてる。

「さて、そろそろ伊吹とスウは支度してきて」
桂馬さんが指示すると、伊吹さんはウツミに肩組んで、
パーティションの奥へ引っ込んでいってしまった。

ウツミの話によると、奥にはメイク台があったり、
衣装なんかがいくつか用意してあるってことだったな。
そう言えば、スタイリストがどこにもいない。
ということは、そこら辺は各自に任せてるのか。

最初はこの衣装でいくか、とか、
ちょっとお揃いで着てみようぜ、という声が聞こえる。
仲良さそうな伊吹さんとの会話に、
俺らしくもないほどやきもちを妬いてしまった。

そこから出てきた2人は、
色違いのワイシャツに着替えていた。
しかも、胸が少しはだけていて俺は更にむすっとした。

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