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  [ 青い空を見上げて3rd 29 ]
2011-05-17(Tue) 08:45:01
阿久津城


「それじゃあ、まずは並んで立って。
 次はお互いに見つめ合って、そうそう」
青柳さんの指示で、ウツミと伊吹さんが、
慣れたようにポーズを決めていく。
衣装はもう3着目で、今はトレーナーに短パン、
それから中折れハットに、サングラスをかけていた。
伊吹さんがウツミをリードするように挑発し、
ウツミはそれに負けまいと同じポーズをする。

青柳さんのフォローもあってかウツミは素人なりに、
伊吹さんを見本にして、顔をきちんと作っていた。
笑えば笑うし、マジメな顔になればマジメな顔をするし、
たまに唇を尖らせて拗ね顔もする。

俺といる時とは、まるで別人のウツミ。

伊吹さんも気付き、時々わくわくした表情になる。

あっという間に4時間が過ぎたところで、
セット内容を変更する関係で休憩になった。
立ちっ放しと、ライトの熱さのせいか、
ウツミも伊吹さんも、汗だくでテーブルに寄る。
お茶を一気に飲み、ウツミは大きく息をついた。

「スウ疲れた?」
スポーツジムで一汗かいたかのように、
タオルを首にかけスポーツドリンクを飲む、伊吹さん。
モデルは一見華やかだが、体力がかなり必要らしい。

「‥大丈夫です」
「だよな。これくらいでへばったら、
 モデルなんかやってらんないし」
「‥そうですね」
「でも、疲れるもんは疲れるけどな」

伊吹さんが子供のように、無邪気に微笑む。
モデルってだけで偉そうにしてるイメージを持ってたけど、
そういう考えは改めよう。
人それぞれだし偉そうな人ばかりじゃないし、
マジメにモデルをやっている人だっているんだから。

「これで体拭くと気持ちいいぜ、スウ」
と、伊吹さんはパウダーシートをウツミに手渡す。
受け取ろうとウツミが手を出すと、伊吹さんが接近した。

「俺があちこち拭いてやろうか?」
「‥いや、いいです」
「いいじゃん。これくらい遠慮すんなよ」
「‥遠慮じゃなくて自分でできるんで」

シートを取り出して、ウツミはさっと体を拭いてしまう。
伊吹さんはウツミのその態度に、また腹を抱え笑った。
断られても断られなくても、どっちでも楽しいみたいだ。

それにしても、この伊吹さん、男でも女でも、
どっちでも食っちゃいそうに見えるな。
たぶんバイだろうけど、ウツミだけは狙わないでほしい。

「スウって、マジで面白いな。
 でも、面白いだけじゃなくてモデルの才能もある」
ウツミの顔に顔を近づける、伊吹さん。

2人の距離に、むすっとしそうだったけど、
俺なりにポーカーフェースを作る。
すると、こっちを見てにやりと笑いやがった。

「格好いいスウの友達もモデルやる?」
「阿久津城と言います」
「ほらな、格好いいやつは名前まで格好いいんだよな」
伊吹さんの名前だって格好いいですよ、
とは口にしないで笑うだけに留めておいた。

俺は暇を持て余し、テーブルに乗ったピンを手にした。
ウツミの脇の髪をくるりと捻り回し、青いラメ入りピンで、
ぱちんと留めてみる。
これで伊吹さんより目立ってやれ、という思いを込めて。

「いや、俺はモデルに向きません」
「モデルより、スタイリストの方が合ってるかもな。
 スウのと同じやつ俺にもやって」
「いいですよ」

伊吹さんには光沢のあるピンクの、
リボンの飾りのついたピン留めをつける。
この人は髪が多いから、脇の髪もちょっと多く取って、
前髪のパーマが目立つように、ぱちんとピンをした。
伊吹さんは気に入った様子だった。

「うわ、これいいわ。すごく俺似合うじゃん」
「‥俺はイヤだから取りたい」

イヤだと言いながらも取らないウツミ。
そんな2人を見た青柳さんが、今度はそれで撮影しよう
とにこりと笑った。

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