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  [ 青い空を見上げて3rd 34 ]
2011-05-27(Fri) 05:45:42
阿久津城


ウツミが伊吹さんと対談をして、数日後。
早朝に家の電話が鳴った。
こういう時間の電話ってのは、
決まって父さんか母さんからだ。
アリゾナとの時差でいつも電話がこの時間になるのを、
俺はちゃんと判っている。

ウツミを踏まないようにベッドから出て、
部屋に置いている子機を取った。
「もしもし?」
「グッモーニン!ジョー!」

これは誰の声なんだ。

父さんでも母さんでもない。

寝ぼけていた頭をがしがしと掻いていたら、
声の主がようやく導き出された。

「クレウスか」
「やっと僕だって判ったかい、寝坊助め」
クレウスは英語で会話してきた。

「寝坊助ってこっちは朝早いっての」
「そんなこと知っているよ」
ったく、いちいち癇に障る言い方しやがる。
知ってるならメールで済ませろよ。

「ハロー!ジョー!元気?」
いきなり声が変わった。
考えるまでもなくこの声はミレトスだ。

「元気だよ一応な。そっちはどうだ?
 って聞かなくても判るから答えなくていいわ」
「何だよ。聞いてよ。俺達はいつも元気さ」

やっぱり答えるのかよと思いながら、
髪を手櫛で整え、俺は問う。
「で、アリゾナから何の用だってんだ?
 わざわざ電話してくるんだからそれなりの用事だろ?」
「え?ジョーはこれを知らないのかい?」

ミレトスと代わったクレウスが、
らしくない声色になった。
わざとかと思ったけどたぶん違う。

「知らないのかって何が?」
「ファッション誌のことだよ。
 伊吹とウツミが対談しているやつ」
「ああ、それなら知ってるよ。
 青柳さんからまだ連絡ないけどな。それがどうした?」
「じゃあ、たぶんこっちが先行発売されたんだろうね。
 雑誌の反響、すごいことになっている」

滅多にないクレウスの低音に、俺の背筋に寒気が走る。
すごいことになっている、とはどういう意味なんだろう。

次の言葉が出ず、ごくりと息を飲んだ。
クレウスが俺の反応を察したのか、続けて喋る。

「伊吹は、これまで全て対談を断っている。
 どんな有名人でもだ。この意味判るかい?」

判ったけど言葉が出なかった。
伊吹と対談したウツミに世界が注目するだろう、
という意味だった。

くそ、なんてことだ。

これは予想外の展開だった。

「ジョーがウツミのナイトなら、しっかりと守ることだ。
 ナイトではないなら、縄をしっかり締めておけ」
苛立ったような口調のクレウス。
黙ったままの俺にむかついたんだろう。

いつもの明るい声のミレトスが、
クレウスの後から俺をフォローする。
「ジョー、しっかりね」

ミレトスの優しさに笑みを浮かべた。
そして、息を吸ってから俺は言う。

「ああ、サンキュ」
「ジョーがしっかりしていないと、
 僕とミレトスがウツミ奪ってしまうよ?」
「そうそう。俺とクレウスがウツミで遊んじゃうよ」

笑いながら言うけど、クレウスの場合は半分マジだろう。
クレウスがミレトスに何をしているかなんて、
こっちはとっくに判っているんだ。
それに加えてウツミを奪われてたまるか。

「俺はクレウスと違って、いつだってしっかりしてる。
 それに、ウツミを大事にしてるさ」
嫌味で返すとクレウスは低音で笑った。
なるほど、この状況での嫌味は、
嫌味ではなくて遠吠えになるってか。

「ジンとアイは、ウツミの写真を見て大喜びだったよ。
 とてもキュートだねってさ」
「あっそ」
この分だと、父さんからメールでも送られてくるかな。

「じゃあ、そういうことだから。また電話する」
もうかけてくるな、と言う間も無く、
クレウスが先に電話を切ってしまった。

俺はベッドに戻り、ウツミは俺のものだと確かめるように、
細い体をぎゅうと抱き締めながら、再び目を閉じた。

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