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  [ 青い空を見上げて3rd 41 ]
2011-06-12(Sun) 05:00:09
阿久津城


ティッシュで体を拭いてから服を整えた。
いつもなら裸で風呂場へ行ってしまう。
それなのに服をまた着たのが謎だったのか、
ウツミが首を捻りながら俺に訊ねた。
「‥ジョー、シャワー浴びないの?」
「ちょっとその前に話あんだけど、いいか?」
「‥何?」

コーラを飲むウツミはつい今しがたのように、
ソファに体育座りをした。
ウツミの正面のソファに、俺が座る。

「ウツミ、どうしてバイト始めたんだよ?」
「‥え?どうしてって?」
「試しにモデルをやってるのは判ってる。
 でも、たぶんちゃんとした理由があるんだろ?」

訊ねるとウツミは唸った。
どう説明しよう、と考えているような顔。
ウツミは何をどう言ってくる。

ここを出るんだ、とか。

ジョーとはもういられない、とか。

相当なマイナス思考モードだな。

コーラを一口飲んでから、
ウツミは顔を上げてこう切り出してきた。
「‥大学に進学するための学費が必要だから」

少しほっとした俺は、それを聞き返した。
「学費?」
「‥両親と俺の関係、ジョーも知ってるだろ。
 高校の学費はしょうがなくても大学の学費くらいは、
 できることなら自分でどうにかしたい」

だから、ギャラのいいモデルをやっているのか。
ウツミがそこまで考えているとは思わなくて、
ちょっと感心してしまった。
俺と違ってウツミは親に甘んじない。
まあ、あんな親だからウツミもそう考えるはずだ。

「‥あと、ずっとここに住むわけにもいかない」

頷きながら聞いていた俺は、ぴくりと眉を動かした。
やっぱりそうなのか、と思いが巡った。

「どういう意味なんだよ?」
「‥学生ならまだしも就職したら、
 ここには住むことができないって思ってる」
「どうしてだよ。父さんも母さんも、
 いつこっちに戻ってくるか判らないだろ。
 戻ってきたって住んでればいいじゃん」
「‥そんなに甘えられない」
「子供が大人に甘えて悪いか。
 ウツミはずっとここにいればいいんだ」

らしくない溜め息を吐かれた。
俺はそれに対して、かちんと頭にきた。

「言いたいことがあるなら言えよ」
「‥だって堂々巡りになる」
「ああ、そりゃなるさ。ウツミが判らず屋だからな」
「‥ジョー、俺達はずっと子供じゃない。
 大人になって仕事もする。それなのに居候できない」

ウツミの悲しそうな目に、かっと頭に血が上って。

ばんっ。

俺は壊さんばかりにテーブルを手で叩いた。
痛みなんて感じない。
むしろ、手よりも心がずきずきと痛んだ。

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