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  [ 青い空を見上げて3rd 43 ]
2011-06-16(Thu) 07:40:28
笹崎侑津弥


到着したのはなぜか学校だった。
門の前で、要塞みたいに聳える和賀高をぼんやり眺める。
職員室も真っ暗で、とても不気味だった。
赤石さんはこんなところを巡回しているんだよな。
仕事ってどんなんでも大変だ。
そんなことを考えていたら、きらっと何かが光った。
俺そういうの見えない人なんですけど、と苦笑い。
寒くもないのに気のせいか寒さまで感じるようだった。

すると、光がこちらに近づいてくる。
やがて人の姿が見えた。
光はそういう類いではなく、ただの懐中電灯らしい。
「あれ?笹崎?どうした?」

学校からこっちにきたのは赤石さんだった。
初めて会った時のような、警備服姿だ。

「‥こんばんは」
「こんばんはって、どうしたんだよ?」
「‥ちょっと考え事してました」

ついさっきの出来事を説明するわけにいかず、
沈んだ顔にならないように笑って答える。
赤石さんは、何かを察して、あっそと返事をした。

「何を考えてもいいけど早く帰れよ。
 予報だとこれから雨降るらしいから」
「‥はい。赤石さんはまだ巡回ですか?」
「ここと、弁護士事務所と、料亭と、
 あとは周辺の学校を4つで、やっと車内待機になる」

懐中電灯で、肩をとんとんと叩くと、
指を折って数を数えながら、赤石さんはそう回答した。
そんなに巡回する場所があるなんて。

「‥そうですか。頑張って下さい」
「ああ、サンキュ」

じゃあな、と赤石さんは合図のように、
懐中電灯を振り回しながら学校側へ踵を返した。
チャラそうに見えるけど、赤石さんは案外マジメだ。

俺もマジメなバイトを選べばよかったかな。
モデルのバイトで楽に稼ごうとして罰が当たったかな。
コンビニとかスーパーのバイトだったら、
ジョーは理解してくれて応援してくれたかな。

どうしたらよかったのか。

答えが見えない。

ジョーがあんなに怒るとは思わなかった。
俺もつい頭にきて、ジョーに怒鳴ってしまった。
門に寄りかかりながら溜め息ひとつ。

すると、冷たいものが落ちてきた。
赤石さんの宣言通り、とうとう雨が降ってきた。
少しずつアスファルトが濡れていく。

学校で雨宿り、ってそれはダメだ。
ちょっと前に学校侵入事件が起きたし、さすがにやばい。

それに、そろそろジョーが俺を探しにくるだろう。
そうだとして、見つからずに済むような静かなところ、
どっかにないだろうか。

ひとつだけあった。
あそこなら、きっとジョーも思い付かないはずだ。

俺は桜通りを抜け、そこへと小走りでむかった。

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