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  [ 青い空を見上げて3rd 48 ]
2011-06-27(Mon) 06:30:44
阿久津城


「もしもし!ウツミか!」
「阿久津、ちょっと落ち着いたら?」
溜め息まじりの呆れ声は、三波だった。
慌ててディスプレイに目をやると、
ばっちりと三波の名前が表示されている。
俺はそれだけ焦っていたらしい。
こんなんじゃ溜め息も吐きたくなる。

「悪い、三波」
「いいよ。それだけテンパってるみたいだし」

苦笑いする三波が、ふと頭を過ぎる。
俺は携帯を手に、キッチンへいき、
コップに水を汲んでぐいっと飲み干した。
口から垂れる水を、手の甲で拭う。

「で、何の用だ?」
「阿久津が血眼になって笹崎君を捜索してるって、
 さっきマキから聞いたからさ」

血眼、と聞いて笑いが漏れた。
周りにはどうやらそう見えているらしい。
まあ、あながち間違ってないか。

空のコップをシンクに置いて、イスに座った。
深く座り、ぐったりと項垂れた瞬間だった。

「さっき見かけたよ、笹崎君」

三波の言葉に、座ったばかりのイスを立つ。
その勢いでイスがばたんと倒れた。

「どこだ!どこにいた!」
「飲み会の帰り、姉さんが見たって」

場所はスタジオクローバー付近だった。
ウツミはそこへ何しに行きやがったんだ。
いや、スタジオに行ったとは限らないか。
だけど、ウツミは知らないところへ行かないはず。

意外と慎重で、臆病で。

それなのに肝が座っていて、俺よりも男らしい時がある。

何しにスタジオへ行ったんだ、ウツミ。

ウツミの考えが読めなくて、もどかしい。
そんな自分に苛立って、テーブルを強く叩いた。
手が痺れてきたけど頭は冷やされた。

「阿久津、大丈夫?」
「大丈夫だ」
「手伝いが必要なら、そっち行こうか?」
「いい。あとは俺がやる」
「それならいいけど、僕でよければいつでも呼んで」

俺達は、お互いの関係を知っている。
数少ない仲間だから、こうやって声をかけてくれる。
身近にこういう味方がいるだけで心強くなれた。

「サンキュ」
「うん、それじゃあね」

三波の音声が静かに切れた。
イスを立て直してどっかり腰を下ろす。
ふうっと深く溜め息をついて、俺は時計を見た。

23時、そろそろ終電がなくなる頃合だった。

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ジョーが珍しくイライラ‥。

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