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  [ 青い空を見上げて3rd 51 ]
2011-07-03(Sun) 05:40:39
笹崎侑津弥


脱げと言われて困った。
それって、どういう意味なんだろう。
怯える俺に、にやりと微笑む伊吹さん。
その伊吹さんの右手が、俺のシャツを捲る。
俺は焦り、咄嗟にそれを拒否した。

「‥ちょ‥やめて下さいっ」
「そのままだと風邪引くだろうが。
 乾かしてやるからそれ脱げっつーの」
伊吹さんが、呆れたように言う。

脱がされて何かされる、と思っていた俺。
先走った勘違いに、かあっと真っ赤になった。

「‥すみません」
謝る声も、恥ずかしくて小さくなる。

言われてシャツを脱ぐと、
俺の傍のソファに服が投げられた。
「これ着てろ。俺のだけど洗ってあるから」

そこには、トレーナーにジャージのズボン、
ボクサーパンツまで用意されてあった。
そこら辺の量販店で売ってそうな、ごく普通のものだ。

「下も脱げ。その分だと、びっしょりだろうし」
「‥でも‥それはちょっと‥」
「そのまま座られたらこっちが困るっつの」

言われてみれば確かにそうだ。
だからと言って、ずっと立ってたら疲れる。

「‥パンツお借りします」
俺はソファに隠れて、パンツを着替えた。
雫が垂れそうな俺の服を、伊吹さんが乾燥かけにいく。

戻ってきた伊吹さんに無言でタオルを渡された。
涙をぐっと堪えながら、頭をがしがしと拭く。
今はこういう優しさに泣きそうになる。
強くなりたい、強くありたい、思っていても難しい。

「とりあえず、そこら辺に座れば」
「‥はい」
「何があったんだって聞いてほしいか?」

伊吹さんの言葉に、首を横に振る。
今後のモデルのバイトのことを考慮すると、
できればジョーのことは隠しておきたかった。
それに、どこまで話していいかも判らない。
優しさに甘えて話をしたら、全てぶちまけそうで怖い。

「あっそ。まあいいや。とりあえずビールいくか。
 ってかビールしかないけど」
ほら、と伊吹さんにビールを手渡される。
伊吹さんは、俺を待たずしてさっさと先に飲み、
撮影でもなかったような笑顔になった。

「ぷは!やっぱビールはいいな!
 俺、発泡酒は苦手。あれはビールじゃない。
 でも仕方ない、企業側だって消費者のために‥」
アルコールで饒舌になったのか、
伊吹さんはビールと発泡酒について、熱く語り出す。

あれこれ聞かれるよりはマシだと思い、
ジョーのことを考えながら黙ってそれを聞いていた。
やがて伊吹さんが、タバコを銜えた。
すうっと煙を吐き出しながら、ビール話を続ける。

タバコって美味いのかな、と思いながら見ていると、
口に銜えていたタバコを差し出された。
「これでいいなら吸ってみるか?」

俺なんかがタバコを吸えるはずがない。
そう思って、首を横に振る。

「タバコに興味あんだろ?」
「‥いえ」
「ウソつけ。タバコ見てんじゃん。
 死にはしないから吸ってみろって」

口に突っ込まれ軽く息を吸うと、
案の定、息が詰まって酷く咽せた。
口を抑えながら咳き込んでいると、伊吹さんが爆笑した。
「あはは、やっぱ咽たか」

咳き込みすぎて涙が滲んできた。
その目でぎろりと睨む。
すると伊吹さんは、笑いを止めた。
その代わり、俺をバカにするような顔になった。

「へえ、スウってそんな目もできるんだ?」
「‥だって頭にきたし」
「何があったか知らんけど、家を出てきて雨に濡れて、
 ここまできておいて、それを言うか?」

1人だったらどうせ何もできないくせに。

そういうニュアンスの、皮肉な台詞。

俺の目は、もっと吊り上がった。
「‥それとこれとは話が別じゃないですか」
「ふん、そうきたか」

勝気な表情で、ずいっと接近してくる伊吹さん。
受けて立つとばかりに俺は引かなかった。

「いいね、スウ、すごくそそられる」

瞬間、伊吹さんにキスをされて硬直した。

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