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  [ 青い空を見上げて3rd 53 ]
2011-07-08(Fri) 07:35:10
笹崎侑津弥


「‥うええええん」
泣いている、と自覚した瞬間、
俺は情けない声を上げていた。
「いきなり泣いて何なんだよ。
 さっきまでスウもノリノリだっただろ」
さっきまで勝気でクールだった伊吹さんが、
らしくないほど焦っている。

この人は悪くない。

好きな人がいるのに、キスをして。

それを悔み悲しむ俺が悪い。

涙がぶわっと溢れてくる。
そのまま、顔を隠さないで泣き続けた。
まるでガキみたいに。

「‥うええええん」
「ったく、俺が悪かったから泣き止めよ」
「‥うええええん」
「何でも言うこと聞くから、
 マジでもう泣き止んでくれって」

伊吹さんの台詞に、俺の眉が揺れ動く。
「‥何でも?」
「ああ、男に二言は無い」

ジョーの傍に戻りたい。
だけど電車がない。
伊吹さんは車持ってるかな。
持っているなら送ってもらおうか。

でも、どんな顔してジョーに会えばいい。

今はまだ合わせる顔がない。

それなら、ここはとりあえず。

ぐしぐしと鼻を啜りながら俺は言った。
「‥アイス」
「は?」
「‥アイス食べたい」

何でここでアイスが出てくるんだよ、
という表情の伊吹さん。
頭を掻きながら口を曲げている。

「アイスなんて買い置きしてないな。
 じゃあ、コンビニ行って買ってくる」
この場を去ろうとする服を掴む。
びっくりしたのか、伊吹さんが見向いた。

「何だよ、離せよ」
「‥俺も行く」
「は?今どういう顔なのか判ってんのか?」

涙を流して目は赤い。
鼻水も、さっきから啜りっぱなしだ。
そんなこと訊ねられなくても、
人に見せられないほど顔が酷いことくらい、
とっくに承知している。

「‥判ってるけどここに残りたくない」
「でもアイス食いたいんだろ?」
「‥残されるのもイヤだから行く」

伊吹さんの洋服を、ぐいっと引っ張った。
このまま引きずられても構わなかった。
すると、伊吹さんが脱力した。
降参と言いたげに両手を上げて、ぐったりする。

ここで伊吹さんが、閃いた顔になった。
何かいいことでも思いついたのか、
上げていた手をぽんと叩く。
そして、携帯を操作し、笑いながら言った。

「判った判った、俺はどこにも行かない。
 だから、ビール飲んで待ってろ。いいな?」
俺は服から手を離して、首を縦に振る。

ティッシュの箱を俺に差し出しながら、
伊吹さんは携帯で、どこかへ電話をした。
「店長、俺だよ俺。おれおれ詐欺じゃないって。
 はいはい、片桐伊吹です」

電話の相手に、面倒そうに返答する。
片桐伊吹、それが伊吹さんの本名なのか。

「早くできるピザ頼むよ。サイズはMであとは‥」
ティッシュで顔を拭いている俺を見る。
しょうがないな、とでも言いたそうな顔をして、
伊吹さんはこんな注文をした。

「アイス全種とドリンク全種、急いで持ってきて」

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