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  [ 青い空を見上げて3rd 54 ]
2011-07-09(Sat) 11:05:45
笹崎侑津弥


「店長、サンキュ」
伊吹さんが玄関で、ピザ屋の人に礼を言った。
がちゃん、とドアの閉じる音がした。
ピザの小さな箱と、大きなビニールを持って、
玄関からリビングへ戻ってきた伊吹さん。

「ほらよ」
渡されたビニールの中には、
多くのアイスとジュースが詰められていた。
俺はそこからオレンジシャーベットを選んで、
ついでにコーラも取ってビニールを置く。

「‥ありがとうございます」
蓋を外してスプーンでアイスを口に運んだ。
手作りっぽくてすごく美味かった。

「‥美味い」
「ここは美味くて評判なんだよ。
 ピザも食うか?デリバリで一番美味いぞ。
 そのくせ24時間営業なんだぜ。すごいだろ」
「‥そうなんですか」

アイスを食べる度、口の冷たさで涙が引く。
これ、ジョーにも食べさせたい。
そう考えて、引っ込んでいた涙が滲んだ。
伊吹さんに目撃されて、疲れたような顔をされる。

「はあ。またかよ。どうして泣いてんだよ。
 キスが原因なのか?そんなにイヤだったのか?」
「‥いえ」
「じゃあ何だよ。聞いてやるから話せ」

聞いてやるから話せ、だって。
目線が上からのくせにやけに親切で笑った。

どかっと隣に座ってからビール缶を空にすると、
スプーンを取り出しグレープのアイスを食べ始めた。
そうしながら伊吹さんが傾聴モードになる。

この人に喋ってもいいか未だ悩んでいた。

でも、話せって言った。

俺はもう隠せない。

隠していたら頭がパンクする。

シャーベットで気を引き締めてから、
ごくり、と喉を鳴らし口を開いた。

「‥恋人と、ちょっと意見合わなくて」
「モデルやってることにか?」
「‥そうです」
「スウがやりたくてやってんだろ。
 反対されたくらいで落胆すんなっつの」
「‥そうなんですけど、でも、そうじゃなくて‥」

ジョーとずっと一緒にいたくてモデルをした。
その気持ちを、判って欲しかった。

俺がそれをちゃんと伝えられなくて。

ジョーにもそれを判ってもらえなくて。

もどかしくて。

また涙が滲んだ。
すると、アイスを口に突っ込まれた。
口が冷たくなって涙が引く。

「めそめそしても解決しないだろうが。
 泣いて済むなら、俺なんか枯れるほど泣いてる」
俺の口からスプーンを引き抜きながら、
伊吹さんはむっとした表情をした。

意味ありげな言葉が、ちょっと気になった。
何かあったのか訊ねようとすると、
俺のポケットの携帯を奪われてしまった。

「ふん、やっぱりオフにしてやがったな。
 めそめそする暇があんならさっさと話しちまえよ」
と、伊吹さんが電源をオンにする。

瞬間、コール音が鳴った。

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