BLUE BIND
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実は私、献血大好きなのです。
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ぜひご協力をお願い致します。
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寄付や献血を、行ったり訴えることが、
キレイ事に見えても構いません。
必要としている人がいるのは確かです。
実質的な行動はなくとも、
こういうのがあるということを、
知ってもらえるだけでも嬉しいです。
お読み頂きありがとうございました。
[ 僕達の体育祭 3 ]
2010-06-16(Wed) 05:30:05
阿久津城
あっという間に体育祭の日がやってきた。
雨天中止の願いは届かず、素晴らしいほどの晴天だ。
高校生にもなると体育祭というのは、
競うというよりはのんびり過ごすのがメインだ。
今時、競争やダンスなんて面白くもないし、
こんなことで誰もマジにならないと思う。
俺は、ロープで仕切られた校庭のスペースで、
ウツミと並んで座っていた。
もちろん2人きりではなく、周りにはクラスメイト達もいる。
リレーは昼休み直前だった。
学年対抗戦はメインイベントで体育祭終了前にやるらしい。
今は、昼休み直前の、少し前。
「はあ‥どうして1番目なんだよ‥」
ぼやくのは、言葉とは裏腹に、
念入りにウォーミングアップをしている仁志。
筋を伸ばしながら体を温めている。
「サッカー部なんだし、ランニングくらいするだろ。
仁志だったらトップ楽勝だろうから頑張ってくれよな」
そうすれば俺の足が遅いのが、あんまり目立たないからな、
と、言葉とは裏腹に、心の中で付け足す。
仁志は、背が高く、細身ではあるけど筋肉がしっかりしている。
肌もこんがり焼けていて、
足もそれなりに速いんじゃないかと思う。
「部活とリレーじゃ大違いだっての。
それに俺はサッカー部だけど、ポジションはキーバーだし、
ランニングなんかあんまりやらないぜ」
仁志がそう言った瞬間、クラスメイトが溜め息をついた。
どうやら、クラスメイトは過度な期待を仁志にしていたらしい。
露骨にがっかりされた仁志は、ぷくっと頬を膨らませた。
俺は、俺のために張り切ってもらおうと、仁志にこう拍車をかける。
「ここで頑張って格好よくきめたら、
女子の人気があがって仁志の時代になるぜ?」
さっきまでやる気なんてないような顔をしていたくせに、
目をぎらぎらと燃やしている、仁志。
「そうか!そうだよな!」
ちょろいけど、こっちが心配になるくらい単純だ。
仁志とウツミには期待できるとして、俺と荒本は蚊帳の外だ。
かなりの戦力外だろう。
まあ、俺やウツミは別に、女子なんかの人気はいらないし、
そこそこ走ればいいって考えだけどな。
リレー選手に集まるよう放送が聞こえてきて、
俺達は、ぼちぼち立ち上がった。
クラスメイトに頑張れと応援されながら、グラウンドにいく。
リレーは、1・2・3番目に走る者は、トラック1周のみで、
アンカーのみ2周することになっていた。
トラックにはクラス順に並ぶことになっていて、
仁志は、バトンを手に3番目に立っている。
「位置について!」
体育教師の、張り切った声が聞こえて、ぱーんと合図が反響した。
予想通り、仁志がトップを疾走する。
サッカー部らしいいい走りじゃん、と腕組をしながら見学していた。
すかさず、荒本がグラウンドで待機して、
トップをキープしていた仁志からバトンをもらうとダッシュした。
2人に抜かされて3位で走っている。
それでも、荒本にしてはなかなかの好成績だった。
「じゃあ、ぼちぼち走ってくるか」
ウツミに笑って、俺はグラウンドに立った。
荒本からバトンを手渡されて、とにかく手と足を動かした。
マジになって走らないって決めていたけど、
仁志と荒本の姿を見て、少しだけ心を改めたのだ。
トラック半周終わって、ウツミが見えてきた。
俺はかろうじて誰にも抜かされておらず、
3位キープのままで疾走する。
これくらいならウツミが逆転してくれたりして、
なんて思った時だった。
どんっ。
背中にぶつかった衝撃がして、ぐるっと天地が回転した。
気が付くとグラウンドに突っ伏していて、周囲は静まり返っていた。
どうやら俺は派手に転んだらしい。
慌てて立ち上がると、膝ががくんと崩れる。
いらっとしつつ、膝を見るとかなり血が出ていた。
皮だか肉だか、よく判らないものが剥けている。
ざわっと周りがどよめく中、それを見た女子が悲鳴を上げた。
やばい、なんだこれ。
膝が、痛いというよりは熱い。
それでも走らなきゃという思いだけがあって、
歯を食いしばりながら立ち上がろうとした。
その瞬間だった。
「ジョー!こい!」
ウツミが、バトンを受け取るために手を伸ばながら、
俺のことを呼んだ。
それも、こんな声量あったのかと思うほどの大声だった。
よく見るとアンカーはもう誰もいない。
俺はいつの間にか、ビリになっていたみたいだ。
「俺のところまで走ってこい!ジョー!」
俺のところまで走ってこい、だと。
公衆の面前で、恥ずかしいこと言いやがって。
などと苦笑いしつつ、踏ん張りながら走り出して、
何とかウツミにバトンを渡した。
トラックの内側にいくと安心したのか、
痛みによろけて倒れそうになった。
そんな俺をがっしりと支えてくれた、仁志と荒本。
誰もがウツミに同情の目をむけていた。
だけど、俺は見た。
まるで大砲から発射した弾丸のように、ウツミが走り出したのを。
強くてしなやかな走りのウツミは、
前を走る奴を、すうっと音をたてずに抜かしていく。
静かに獲物を射止める姿に、ぞくっと寒気がした。
よく見ると、ウツミの顔がすっげ怒っている。
もしかしたらそれが影響してこんな激走なのかもしれない。
ウツミは周りを気にも止めず、土を蹴る足で、
ぐんぐんと進んでいき、そして、トップを捕えた。
誰もがビリになると思っていたけど、それが覆されて、
全校生徒が、あんぐりと口を開けていた。
「ウツミ!突っ走れ!」
俺は、思わず大声で叫んだ。
ちらっと俺を見たウツミが、笑って頷いた。
余裕とでも言いたげな笑顔に、思わず冷や汗が流れる。
俺の声援で正気を戻し、
クラスメイトが一斉に応援を開始しやがった。
体育祭なんて、くだらないと思っていたしやる気もなかったけど、
今はすっげ楽しいと感じていた。
ウツミがそうさせてくれた。
そのウツミが先頭でゴールテープをきった。
大逆転だ!
その場が歓声に包まれた。
「ウッチ!やった!すごいじゃねえか!」
仁志が、俺を放ってウツミに元に駆けつけると、
ウツミの肩に腕を回しやがった。
「そんなに速いなんて知らなかったよ、笹崎君!」
俺は、荒本に肩を借りながらウツミの元へ行った。
仁志同様、荒本もかなり興奮していて、目をきらきら輝かせている。
仁志も荒本も、クラスメイトも、
応援していたギャラリーも大歓声だった。
そんな光景を満喫もせず、ウツミは俺をじっと見ている。
かなり心配そうな表情をしていた。
まさか、さっき怒っていたのは俺のため?
なんて考えるとちょっと嬉くなった。
「‥ジョー、大丈夫?」
「ああ、大丈夫。どうってことないって。
それにしても、ウツミいい走りだったな。
元陸上部だけあって短距離もすごいじゃん」
すると、嫌そうに仁志から離れながら、
ウツミはしれっと言ったのだった。
「‥全国大会での短距離走で6位入賞だし。
そんなことよりも、仁志、ウッチって呼ぶのやめろよ」
ほらな。
アンカーにぴったりだっただろう。
それから、ウツミと仁志に抱えられて囚われた宇宙人のように、
俺はそのまま保健室に行くことになった。
止血後、大きなガーゼを貼られた。
曲げると痛くて、さすがにリレーには出られそうもない。
結局、学年リレーは井出とチェンジになった。
治療中、リレーでぶつかった奴が謝りにやってきた。
1年2組の、波多野という人物だ。
「本当にごめん!」
と、土下座せんばかりの謝罪をしてきた。
誠意のある態度に、なぜかこっちが恐縮するほどだった。
波多野は、昼ごはん奢るとか、治療費を出すとか言ってきて、
リレーなんだしお互い様だからと俺は断わったけど、
それだけじゃあ納得できないという表情だった。
保険医も、こんなのすぐに治るから気にしなくていいと、
ガーゼを貼りながら言ってくれた。
さっきまで怒っていたウツミまでもが珍しく、
「‥もういいって。なあ、ジョー?」
と、波多野に助け舟を出す。
「じゃあ、俺にできることがあればいつでも声かけてくれ」
結局、波多野のこの言葉でやっと一段落した。
そのうち、教科書とか辞書でも忘れたら借りにいくか。
そして、学年リレーの結果は、
もちろんウツミの活躍で1位をゲットしたのだった。
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