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  [ 蒼空と流星の狭間 2 ]
2011-09-06(Tue) 09:00:51
阿久津城


楠さんと舞斗さんが隣にいる。
俺達は、時間が止まったように全身を固まらせた。
あまりの偶然にびっくりして反応できない。
「‥楠さん」
「やっぱり侑津弥君でしたか。それに阿久津君まで。
 こんな場所で奇遇ですね」

偶然がきっかけで顔見知りになった2人。
南国のこんなところで再会してしまうなんて、
神様のいたずらにも程度がある。

「お2人も、このホテルに泊まるのですか?」
「いや、今きたばかりですけど帰るところです」
「え?今きたばかりで帰るんですか?」

予約ミスがあった経緯を、楠さんに伝える。
すると、満さんが困った顔になった。

「そうでしたか」
「こんなイレギュラー滅多にありませんけどね。
 ホテルの不備ですけど今更しょうがないし、
 ここがなくなるわけじゃないんで、またきますよ」

言いながら俺はバッグを担いだ。
ウツミも悲しそうにバッグを担ごうとすると、
楠さんが止めに入って、こう告げた。

「それなら、もう1つだけ、
 私がイレギュラーを起こしてあげましょう」

待っていて下さい、とウインクをしてから、
舞斗さんに何やら耳打ちした楠さん。
もそもそと、カウンター前で内緒話を交わしている。
仕方ない様子で、舞斗さんは何かを了解した。

そして、楠さんはフロントにこう伝えた。
「スイートをお願いしている楠です。
 あそこは、確かダブルベッドが2つありましたよね。
 彼らとシェアしたいのですが構いませんか?」

もう1部屋ある、スイートルーム。

予約していたのはこの2人だったらしい。

ウツミは慌てて、楠さんのシャツを掴んだ。
「‥そ‥そこまでしなくていいですよ」
「そうです。2人は2人で、ゆっくり過ごして下さい」
慌てはしないものの俺は、ウツミに乗っかる。

だって、恋人であろうこの2人。
甘々な空間に、俺達がいたら邪魔なだけだ。

「いいじゃないですか。
 2人も楽しいですけど4人も楽しいですよ」
そう言うと、楠さんはマネージャーに笑いかけ、
宿泊費や食事代、シェアした場合の料金についてとか、
どんどんと話を進め始めてしまった。

そして、俺達はスイートルームで相部屋することになった。

突然の展開に、ウツミと俺はぽかんとした。
これはラッキーなのか、それともアンラッキーなのか。
まかさこんなことになるとは、予想外どころか規定外で、
コメントしようもない。

いずれにしろ2人の邪魔はしないようにする。
それだけが俺達にできる唯一のことだろう。
ウツミとそれを確認するように、目を合わせ頷き合った。

「‥邪魔してすみません舞斗さん」
楠さんがフロントで交渉をしている後で、
ウツミが舞斗さんに謝罪する。
俺も隣で、ぺこりと頭を下げた。

舞斗さんは苦笑いし、手を軽く振る。
「いいよ、そんなに気にしなくて。
 満さんはああいう人なんだよ」

気にするなと言われても、それはムリだ。
観光中や宿泊中、俺もウツミもずっと気にするだろう。
雰囲気からそれを察知したのか、
舞斗さんが笑顔で、俺とウツミの肩をぽんと叩いた。

「気になるならとにかく遊べばいいさ。
 それが満さんへの報いだって」
「舞斗君、私がまるで死んだように言わないで下さいよ」

満さんが傍にきて笑った。
そして、後からやってきたベルボーイにバッグを渡す。
「さて、イヤなことは忘れて遊びましょう。
 それが私への報いですよ、侑津弥君に阿久津君、舞斗君」

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