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  [ 見知らぬとこで七色が 8 ]
2011-11-09(Wed) 09:30:00
空になったペットボトルを渡した。
「ごちそうさま」
「これで足りた?もっとあるよ?」
「もう充分だよ。それより、俺トイレ行きたい」
立ち上がろうとして膝が折れた。
突然の出来事に、全てがスローモーションに変わる。
このままいったら、間違いなく床直撃コース。
良くて怪我で、悪くて骨折だ。

それでも、どうすることもできなくて、
俺は思わずぎゅっと目を閉じた。
瞬間、俺の体ががしっと男に支えられた。

「っと、危ない危ない」
「ごめん」
謝ると男が笑った。
問題なしといった表情だった。

しかし、これはかなりやばい。
力が入らなくてやっぱり踏ん張れない。
これだと俺はトイレにも行けない。

すると、肩を組んでくれて男が支えてくれた。
「これならどう?」
「あ、うん、いいみたい」
「よし、トイレ行こうか」

俺に頷いて歩き出した。
廊下に出て洗面所に入り、脇にあるトイレに着いた。
キレイに掃除されたトイレだった。

「ほら、ここ掴まって」
トイレの手すりに、掴まって立つ。
すると、男がズボンに手をかけてきた。

「うわ!いいって!あとはやるから!」
「立位もとれないくせに何言ってんだ。
 それに男同士なんだし、これくらい恥ずかしくない」

言いながらズボンを下ろされてしまう。
そして、トイレに座るよう促された。
こういうの慣れてる手つきではあるけど、
俺はとんでもなく恥ずかしかった。

「終わったら呼んで」
笑いながらドアが閉められた。
よかった、用を足すところはさすがに離れ離れか。
ほっとしながら、俺は息をつきながら用を足す。

「もう終わった」
「音しなかったけど出た?」
「そんなの聞くなよ。ってか出たよ」

また掴まり立ちし、男にズボンを上げてもらい、
肩を組んで歩き出す。
さっきの布団に寝転がると、溜め息が漏れた。
これだけで、かなり疲れた。

「お疲れ様」
「こっちの台詞だって」
「半日は寝ていたから筋力が落ちたのかも。
 トイレでも居間でもいい、少しずつ歩こうな」

マジかよ、とがっかりしたけど、
そんなことに詳しい男にびっくりした。
驚いている俺を、男はゆっくり寝かす。
そして、笑顔を見せながら布団を体にかけてくれた。

あやすように体がぽんぽんと叩かれる。
そんなに優しくしてくれなくて構わないのに。
俺は、記憶喪失で正体不明だ。
それなのに、どうしてこんなに親切にしてくれるのか。

歩いて疲れて、うとうとしてくる。
寝る前に、どうしても聞きたいことがあった。

「あのさ‥」
「何?」
「お前のことどう呼べばいい?」

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