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  [ 見知らぬとこで七色が 17 ]
2011-11-29(Tue) 04:45:03
俺がこれまで使っていたらしき、
オーソドックスなショルダーバッグがある。
それに、折り畳み傘と、タオル、地図、
金を入れて家を出た。
こうやって外に出るのは久し振りだった。
空はちょっと曇っている。
だけど、空気がとても新鮮で、すごく美味しい。

歩いてみるとふらつくこともなくしっかり歩けた。
思っていたより体力も戻ったみたいだ。

これならいつでも警察に出頭することができる。
警察に行って事情を伝えて、
俺がどこの誰なのかを調べてもらおう。

そうなったら、コウとはお別れになる。
でも、これまでのお礼はちゃんと返したいから、
コウのこと忘れないように帰ったらメモしておこう。

そんなことを考えながら進んでいくと、公園に到着した。
コウの話だと、木の下にあるベンチに俺は座っていた。

公園が手狭で、ベンチはひとつしかなかった。
どきどきしながらも、ちょこんと腰を下ろしてみる。
だけど、やっぱり何も思い出せなかった。

でも、コウはここで俺を見つけてくれた。
それが嬉しくて、思わずえへへと笑ってしまった。

ここから見えるものを確かめる。
駅、ビルにファミレスに、カフェ、
遠くに目をやると、ラブホも何件かある。
たぶん、どこにでもある風景なんだろうな。

しばらく座っていると、空がごろごろと唸った。
雲も黒くなってきてあとちょっとで雨が降りそうだ。

ご飯をどこかで食べて、そろそろ家に戻ろう。
俺はカフェに行き、抹茶ラテとサンドイッチを注文して、
通りに面したカウンターに座って食べる。

ここからヒューマンウォッチングをしていると、
みんなが急いで歩いていた。
やっぱり考えることは同じで、雨が降る前に、
どこかに総員退避ってなもんだ。

久々の外食に満足し、コーヒーを頼んで飲んでいると、
雨がとうとう降ってきた。
これを飲み終えたら、傘をさして帰ろう。

と、思った時だった。
カフェのウインドウ前に女の子がやってきた。
たぶん10歳くらい。

どうやら傘を持ってないのか、雨宿りしている様子。
止みそうにない雨に、女の子の顔は、とても不安そうだ。

後ろ姿に、切なさを感じて。

俺はカフェを出て、女の子に傘を渡した。

「これどうぞ」
女の子は、髪を揺らしながらふるふると首を振った。
受け取れないといった困り顔に、思わず笑った。

「俺の家、すぐそこだから。これ使って帰りなよ」
女の子は笑い、傘を広げながら礼を言った。
そして、コウの黒い傘は女の子と共に去った。

さて、これからどうしようか。
とりあえず、カフェに戻ってコーヒーをまた飲むことにした。

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