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  [ 見知らぬとこで七色が 21 ]
2011-12-10(Sat) 10:00:00
「エン?」
髪を拭いていた手を止めて、コウが俺を呼んだ。
呼ばれる声だけで苦しくなる。
そんな思いを抑えながら、冷静を装って返事を返した。
「何?」
「いや、どうしたのかなって‥」
「ごめん、ちょっとだけこのままでいさせて」
「どこか具合悪いの?」
「違うから‥すぐに離れるから‥」

心の中で、色んな勘定が混ざる。

好きなのに好きと言いたくない。
記憶を戻したいのにコウとの現在を忘れたくない。
離れたくないけどここにいるのは悪い。

不意に、ぽろっと涙が溢れた。

さすがにこれはまずい。
俺は慌ててバスタオルで顔を拭いた。
考えすぎて泣くとか、ありえない。
俺だっていい歳のはずなのに泣くのはダメだ。

すると、少し屈んだコウが顔を覗いてきた。
誤魔化せない距離で、目と目が合う。

「どうして泣いてんの?」
「これは‥あの‥」
「俺のせいなの?怒ってないよ?」
「そうじゃなくて、
 コウが見つけてくれてよかったって思ったら、
 涙が急に‥あはは‥ごめん‥」
「さっきそんなに不安だったんだな」

乾いた髪を、コウに撫でられた。
その温もりに、不安な気持ちが一気に放出した。

「女の子が困ってたから折り畳み貸しちゃったり、
 地図が雨に濡れたから道が判らなくなったり、
 そしたら、コウに会えなくなるって怖くなって‥っ」

コウが俺の背中を撫でつつ、頷きながら聞いてくれる。
そのまま、とんでもないことを口走ってしまった。
「離れたくなくて‥傍にいたくて‥っ」

そう言った時、コウの手が止まった。

一度こんなこと言葉にしたら、次から次へと、
コウに言いたいことが溢れてくる。
それを喉の奥で抑えるように口を手で塞いだ。

俺はそっとコウを見た。
コウが俺の顔を見つめる。

「俺でいいならエンから離れないよ」
マジメな声で言われた。

そんなこと言われたら俺つけあがっちゃうよ。
つけあがってもいいのかな。

コウが困ったように笑いながら、
ゆっくり顔を近づけてきた。
俺の肩を掴む手に、力が篭っているのが少し伝わる。

俺もゆっくり近づいた。

そして、静かに唇が重なった。

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風邪回復傾向です。
ご心配おかけして(ないかもしれませんが笑)
すみません(ノД`)


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