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  [ 見知らぬとこで七色が 22 ]
2011-12-11(Sun) 07:50:00
心臓の鼓動が、やけにうるさい。
そんな中でも、唇からの熱だけは感じられた。
キスはこれが初めてじゃない気がする。
だけど、同性とするのはこれが初体験だろう。
記憶はないけどそんな予感だけはした。

コウが唇を離して俺を見る。
その目は切なそうな色を宿していた。

「ごめん、エン」
「どうして謝ってくるの?」
「記憶がないだけで恋人がいるかもしれない」

そんなことを考えていたコウに驚く。
俺は唇を噛み、こう答えた。

「今そんなことを考えてもしょうがないよ」
「そうだね」
「だって、俺はコウのこと好きに‥っ」

言葉の途中で、コウが俺の唇に指を当てる。
そして、切ない目から悲しい目になって、
搾り出したような声で言ってきた。

「俺のことは諦めてほしい」

衝撃的な一言に、俺の目が大きく広がる。
俺は思わずコウの服を掴んだ。
「だったら、どうしてキスしてきたわけ?
 俺のこと好きだから、キスしたんじゃないの?」

コウは目を逸らして口を閉ざす。
言いたいことを堪えている、そんな表情だった。

「いるかもしれない恋人が気掛かりになってんの?」
目を逸らしたまま下を向いて、
コウは首を振りながら辛い顔になった。

そして、コウは言いたくなさそうに言った。
「エンのせいじゃない。俺が悪い。
 俺はエンが思ってるより汚れているんだ」

聞けるようなムードじゃないって判っていても、
どういうことか聞かずにはいられない。
コウのシャツを握り直してから口を開いた。

「どういう意味なのか説明してよ」
「あのDVD見たよね?」

あの、とは本棚のやつだ。
俺がそれを見たのを知ってる、そんな口調だった。
だったらもう隠しはしない。

「よろけた時にちょっとだけ見えたんだ。
 でも、それだけだよ。
 パッケージ眺めたり、プレーヤーで再生してない」
「なら、俺から言うよ」

言うって何をだろう。

口調からしてイヤな予感しかしない。

だけど、聞くことから逃れられない。

ごくりと喉を鳴らすと、コウは諦めたように笑った。
「あのDVDに出ているのは俺なんだ」

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なんとなくコウが誰なのか判ってきたような‥?

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