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  [ 見知らぬとこで七色が 23 ]
2011-12-14(Wed) 07:55:00
コウが何を言ったのか。
耳に入ってきたけど頭に入っていかない。
DVDに出ているのは俺だ、と。

それは、つまり、
コウはそういうので稼いでいるってことだ。

「俺のことが嫌いになっただろ?」
泣きそうな顔をしているコウ。

コウの目を見るだけで胸が痛かった。
でも、どうしてだろう。
それを聞いても、好きだって思いは変わらない。
嫌いになれないし汚れてるだなんて思えないんだ。

コウのことだから、きっと何かあるに違いない。
そうだよ、その何かを知りたい。

「それに出演した理由は?」
言えないと言うように、コウが首を振った。

何だか急に、むかむかしてきた。

記憶のない自分に。

訳も離さないで落ち込んでいるコウに。

好きなのに好きだって言わない、俺達に。

むかついて、コウのシャツの襟を締め上げてやった。
コウが、目を大きくして俺を見る。
「言わないと判んないだろ!聞くから言いなよ!
 聞いたあとに嫌いになるから!」

叫びながら泣きそうになった。
だけど、ここでなんて泣いてやらない。
コウのためになんか泣いてやるもんか。

コウはまだ黙っていた。
俺は更に、シャツを締め上げる。
すると、コウが俺の肩を叩いた。

「ギブアップだ。言うから離してよ」
「ウソつかない?」
「エンには敵わないからちゃんと話すって」

手を離すとコウは喉を撫でた。
力は入れてないけど少し苦しかったらしい。
そして、コウは俺に笑って口を開いた。
「両親の借金の返済、それが目的なんだ」

子供がそんなもの継続するものなのか。
考えを読んだのか、更にコウは続けた。

「俺には夢があった。夢をどうしても諦められなかった。
 そのためには、借金をきちんと返済するのが条件なんだ。
 あのDVDだけじゃなくて、そういうバイトもしてる」
「そういうバイトって?」
「同性向けの風俗」

くらっと目の前が暗くなった。

いや、俺がこれくらいで暗くなってどうする。
コウだってそんなことを好きでやってるんじゃない。

俺は、拳を握って更に訊ねた。
「夢って何?」
「ショップを持つこと。自分がデザインした洋服のね。
 小さい店だけど、もうオープンした。
 準備のためにバイトはここ1ヶ月休んでる」

一瞬だけ頭痛がした。
どこかで聞いたことのあるフレーズが入っていた。
でも、どうしても思い出せなかった。

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