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  [ 見知らぬとこで七色が 24 ]
2011-12-16(Fri) 07:30:00
説明中、コウは真顔だった。
ウソはついていない。
確信させられるような目力もあった。
コウは、夢を追い、それを実現するため、
あんなDVDに出演したり風俗でバイトをしていた。
笑顔の片隅で、どれだけのものを背負ってるのか。

それでも、汚いだなんて思えない。
やっぱり嫌いになれない。
嫌いになってやるって言ったけどムリだ。

「大丈夫?」
優しくコウが訊ねてきた。

「大丈夫」
「ウソだ。顔が青い」
「別にそんなの気のせいだし」
「もういいから俺を嫌いになりなよ」
「なれるわけない」
「しばらくはバイト休ませてもらってるけど、
 またやらないといけない。それでも?」

つまり、同性にそういう行為をするということ。
泣きそうになったけど泣いてもどうしようもない。
好きだから苦しい、好きだから嫌いになれない。

「それでもだよ」
「本当、エンってバカだな」
「知ったように言わないで」
「俺はエンのこと知ってるんだよ」
一瞬、それがどういう意味なのか理解できなかった。

『こんなのお互い様だって』

『優しくてエンらしいって思ったよ』

『俺はエンのこと知ってるんだよ』

今までコウが言っていた、台詞の数々。
マジで俺のこと知ってるのか。

コウの目をじっと見た。
どこか懐かしさを感じる。
瞬間、また頭痛がした。

「自分が誰なのか知りたい?」
「そんなの当たり前じゃん」
「思い出したら俺を忘れるかもよ?」

ドラマとかでは、そういう展開になるんだ。
記憶が戻ると、記憶がなかった時間のことを、
すっぽりと忘れてしまう。

「でも、俺はコウを忘れない」
「根拠のない自信だよ」
「あるよ。それくらい、コウのこと好きだから」

真っ赤になって俺が答えると、
コウも赤くなってからなぜか吹いた。
そして、不思議なことに爆笑された。

「あはは、そうきたか」
「ここは笑うとこじゃないと思うけど」
「そうだね。ごめん」
「謝られると虚しくなる」

コウに釣られて、俺も笑う。
笑いが自然に消えて、コウが呟くように言った。
「明日、思い出すきっかけを俺が与えてあげる」

コウはきっと覚悟している。
俺がコウのことを忘れるかもしれないって。

このままでもいいけど、
このままでいるわけにはいかない。
俺は俺を取り戻し、これまで通りに戻りたい。
そして、そこにコウをプラスするんだ。

「ありがとう。じゃあ今のうちに‥」
俺は言いながら唇を重ねる。

もっと、いっぱいキスしてほしい。

コウが、俺の顔を包む。
俺は爪先で立ち、首に腕を回して唇を深く重ねた。

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