BLUE BIND

BL小説ブログ。危険を感じた方はお逃げ下さい。
  [ 見知らぬとこで七色が 32 ]
2012-01-05(Thu) 10:45:32
翌日、目を覚ますとコウが隣で寝ていた。
しかも2人して全裸ときた。

(以下2人の正体が判明するので要注意)
まさか、男とセックスする日がくるなんてね。
びっくりだけど、今すごく幸せだ。

でも、今日はこれから出発して、
俺のこと全てを、コウが教えてくれる。
嬉しいような怖いような、複雑な心境だ。

何があってもコウのことは忘れない。
誓うようにコウに唇をくっつけると、コウが目を覚ました。

「おはよう」
「おはよう。腰大丈夫?」
「ん、たぶん」

笑ながら言うと、コウが頬を撫でてきた。
それも、懐かしそうな目をしながら。

「どうしたの?」
「いや、エンとこうなるなんて思わなかったからさ」
「後悔してる?」
「まさか。するわけない」
揺るぎない声に、ほっとした。

俺達はごはんを食べてから支度をして、家を出た。
俺がコウに拾われた、ベンチ前を通り過ぎながら、
近くにある駅へむかう。

電車に乗って15分。
5つ目の駅で、コウは降りると言った。
駅の外は、ビルやコンビニが並んでいるだけの、
至って平凡な駅だった。

だけど、何となく知っている。
そんな気がした。

コウの隣を歩くと、コインロッカーがあった。
そこで、ポケットから鍵が取り出された。
俺のカートから出てきたという、例の鍵だ。

「たぶん、これはここのだ」
プレートと同じ数字の刻まれたロッカーに、鍵を刺す。
軽く捻るとかちっと鍵が外れた。
その音を聞いて、どきどきしてきた。

ここを開けたら何かがある。
銃とか、薬とか、それとも別の何かで、
違法性のものだったらどうしようかと困惑した。
そう考えたらもっと胸がうるさくなった。

でも、ロッカーの中にあったのは、そんなものじゃなかった。
カードケースとパスポート、
鍵がたくさんついたキーケースが置かれていた。

「エンは昔から、
 貴重品をロッカーに仕舞っちゃう習慣があったんだよ」
「昔から?」
「そう。ここにエンの身分証なんかもあるだろ?」

コウがパスポートを俺に渡してくれる。
パスポートを手に持ったらごくりと喉が鳴った。

あんなに思い出したかった、自分の正体。
それがここではっきりする。
でも、嬉しさよりも怖さがあった。

手が震えてきて目を閉じると、コウが肩を叩いた。
「大丈夫。俺がいる」

その声に頷いて、ゆっくりと目を開けながら、
パスポートを静かに捲った。
名前を見た瞬間、俺はすごい頭痛に襲われた。
あまりの痛さにパスポートを持ったまま、
その場に屈んだ。

コウが何か言ってる。
それさえも聞き取れないほど頭が痛い。

頭の中を、何かが猛スピードで巡っていた。
それは、どうやら過去の出来事みたいだ。

高校に行っていた頃の自分。

デザイン学校に行っていた頃の自分。

仕事をしている自分。

そして、現在こうしている自分。

霧が晴れるように頭の痛みがなくなって顔を上げる。
そこにいた男をじっと見つめた。
男は、怯えたような顔をしていた。

「金髪、やめたんだ」
怯えていた顔を、少しだけ緩ませて、
ほっと安堵したように呼吸をした。

「そっちはまだ赤い髪のままなんだな」
「だってこれ褒めてくれたじゃん」
「桂馬、そんな昔のことよく覚えてたな」
「そりゃあ覚えてるよ、凛」

俺の名は、加野桂馬。
今スタジオクローバーで働いている。
そして、恋人でありここで微笑んでいるのは、
デザインの専門で一緒だった、長瀬凛。

俺は全てをようやく思い出すことができた。

次話へ 前話へ

お気に召しましたら一票お願いします。
にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
見知らぬとこで七色が | TB:× | CM : 0
見知らぬとこで七色が 31(R18)HOME見知らぬとこで七色が 33

COMMENT

COMMENT POST

:
:
:
:



 
 管理者にだけ表示を許可する


copyright © 2024 BLUE BIND. All Rights Reserved.
  
Item + Template by odaikomachi