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  [ 見知らぬとこで七色が 33 ]
2012-01-07(Sat) 07:30:36
俺と凛は、学部は違かったけど専門が同じだった。
俺はフォトデザイン科で、凛はグラフィックデザイン科。
この時から、俺達はもうすでに目指すものがあった。
出会いは学食だった。
本をじっと読みながらカレーうどんを食べている時、
目の前に凛が座った。

「あ、俺と同じ」
「え?」
「カレーうどん」
「本当だ」
凛もカレーうどんを食べようとしていた。

当時の凛は金髪で、目つきも悪かった。
そのせいか、ヤンキーだの暴走族の総長やってただの、
そんな噂が流れていた。

ああ、こいつが噂のやつか。
確かに目つきは悪いし、顔もちょっと怖いけど、
俺に害がなければヤンキーでも別に構わないや。

そんなことを思っていると、くすりと凛が笑った。
「カレー、ここに飛んでる」

ここ、とは服ではなく頬だった。
凛がポケットから出したハンカチで、
手を伸ばしてまで頬を拭いてくれた。

「あんたって暴走族の総長だったの?」
「中学も高校も制服は、ブレザーだ。
 学ランなんて着たことない」
どうやら特攻服とはご縁がない様子らしい。

返答が面白すぎて俺達は友達になった。
卒業後も、それなりに連絡とっていた。

凛と飲んだ次の日、どじったのはこっちだった。
なんと携帯を水没させた。
メルアドも番号も友達の住所なんかも、
どうやっても復旧できなかった。

凛の住んでいる駅は知っているのに、詳しい住所は判らず、
それきりになってしまっていた。

あれから3年。

短髪黒髪、それが今の凛の姿だった。

「桂馬、どうした?」
思いを巡らせていた俺を、優しく長瀬が呼んだ。

顔を上げて凛を見つめる。
やっぱり、好きになった気持ちに揺らぎはない。
確たる思いにほっとし、にこりと笑った。

「どうもしない。大丈夫」
「だったら、仕事先とかに連絡したら?」
「仕事?そうだった!」

携帯のロックを解除し、メールや着信を確認すると、
虚しいと思うくらい何もなかった。
次いでカレンダーのスケジュールを見る。

そこで、俺はようやく思い出した。

仕事が詰まっていた先月の代わりに、四葉さんが1週間、
オフにしようと言っていたことを。
そして、今がまさにオフの間だった。

ちょっと前に撮影で海外に行って、
帰国後そのままスポンサーのパーティーに出席した。
それが終わった後、海外で使っていた機材を置きに、
酔いながらもスタジオに戻った。
そして、飲みすぎていた俺は、知らない駅の、
公園のベンチで一晩過ごし、そのままとなった。

思い出したらおかしくなって俺は笑った。
凛は、びっくりした。

「あはは。仕事はまだあと2日オフだった」
「そうか。じゃあ、このまま俺の家に戻らない?」
「え?いいの?凛の店は?」
「店ったって俺しかいないし。
 だからさ、戻ってこれまでのこと話そうよ」
「‥話するだけ?」

凛のシャツを握ると、くすっと笑われた。
「それは、帰ってからのお楽しみ」

俺達はお互いに微笑み、ひとまず家に戻ることにした。

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