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  [ 見知らぬとこで七色が 38 ]
2012-01-24(Tue) 09:50:38
その日はたっぷりセックスも話しもして、
俺は夜になってから家に帰った。
アパートの前に立ってみると、懐かしい感じがした。
真っ暗の家に入り、匂いを嗅ぐ。
いつもの匂いがして、心がほっと安らいだ。

シャワーは凛の家で浴びてきている。
だから、まずは荷物の整理をした。
と言ってもどれもすでに洗ってあるから、
クローゼットに入れるだけ。

両親が旅行でバッグの盗難を経験したことがある。
以降はちょっとした外出でさえも、
駅のロッカーに貴重品を入れるようになった。
俺達兄弟も、そうするよう育てられてきた。
まあ、今回ばかりはそれが裏目になったけど。

凛は、俺だって判ってて助けてくれた。
再会した瞬間、俺は記憶を失い、
凛はきっとひどく驚き、そしてがっかりしただろう。
それでも俺のことを信じて、我慢強く見守った。

今度は、俺が凛に恩を返す。

一応、少なからず貯金も持ってるけど、
凛は金なんかを受け取りはしない。
だから、凛のシャツをいくつか買ってきた。
シャツを見ながら、スタジオに行く支度を始める。

2日後、新作バッグの撮影があった。
四葉さんとスタジオの準備をしながら、こう聞かれた。
「桂馬君、久々のオフは満喫できた?」

記憶を無くしましたが友達と会いました。
その友達と恋人になり、今はすごく幸せです。
なんて言ったら驚くだろう。
そんなことを考えながらつい笑った。

「はい。たっぷり満喫しました。
 四葉さんは満喫しました?」
「もちろん。ちょうど姉に子供が産まれてね、
 見舞い行って子供を撮ったよ」
「あ、そんなこと前に言ってましたね」
「うん。男の子で、すごく可愛かった。
 あとは久々にぶらついて撮影もしてきたよ」

あそこにアウトレットがオープンしたよ、
海の見える丘に登ったんだ、
あのカフェに新しいメニューが出たみたいだね、
など、とにかく話が尽きない。

四葉さんとはこんな会話をしながら、
いつも撮影の準備をする。
これが、クローバーのペースなのだ。
そんな会話中にきたのはいつものモデル2人。

「おはよう、桂馬。何かすっきりした顔してるな?」
「‥おはようございます。今日も宜しくお願いします」
誰にでもフランクで明るいやつと、
恥ずかしがり屋のくせに、撮影になると別人になるやつ。

2人に、俺は拝むような手を合わせた。
「おはよ。あのさ、ちょっと頼みがあるんだけど‥」

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