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  [ 決めたゴールを走れ 2 ]
2012-02-08(Wed) 06:45:00
「シーズンの途中ではありますが、
 今日からここで仕事をする、
 メカニックチームのメンバーになります」
八剣オーナーから紹介をされた。
ここは、北部にあるとあるサーキットのピットの内部。
今はまだシーズン中で、3週間後、ここでレースが行われる。
サーキットのパスと共に交通費が送られてきて、
ここにて現地集合となった。
そう、俺はチームESに入ることを選んだのだ。

メカニックだけで20人近いメンバーがいる。
その中から、メインで動くのはこのメンバー達だった。
三木谷銀次、瀧芳文、佐原優太、
そして、数年前にメカニックチーフだった賀川寛一監督。

三木谷は体育会系の、がっちりしたタイプだった。
瀧はひょろりと細いけど、腕はいいものを持っていそうだ。
佐原はいかにもマジメそうな印象である。
みんなが自己紹介していき、そして俺の番がきた。

「前澤聖です。年齢と経験と推薦で、
 チーフやることになりました。宜しくお願いします」
ぺこりと頭を下げると、みんなも頭を下げてくれた。

直後、ピット内がざわざわと騒がしくなった。
どうやらピットに人が入ってきたらしい。
チーム全員の目線がその人物に集中している。

「いいところにきたね」
こっちへきなさい、とばかりにその人物を手招きするオーナー。
その人物とは、チームESのドライバーだった。

「チームESのドライバー、後藤野光君だ」
「どうも」

小柄で細身、といった印象の人物だった。
後藤野さんはチームをぐるりと見回すと、
ぎろり、と俺を睨み、すぐに去って行った。

どうして睨まれたのか判らない。
初対面の人物に、睨まれるようなことをした覚えはない。
だけど、目つきがあまりにも凄んでいて、
情けないことにちょっとだけ震えてしまった。

後藤野さんはチームESにくる以前は、
GTレースのドライバーを務めていた。
鋭いハンドル捌きと、アクセルの思い切りのよさで、
何回もGTレースで優勝をさらっている。
チームESにきてからも、しばらく成績はよかった。

だけど、去年から今節にかけ、
入賞はおろかゴールすらできない状況になっていた。
モータースポーツは元から好きだったし、
新聞やメディアで特集されていれば、イヤでも目につく。

きっと、メカニック総入替がそれと関係している。
まあ、チームでどんな内部事情があるにしろ、
俺は俺で、自分に与えられた役割を果たすだけだ。

俺達はビジネスホテルに寝泊まりしながら、
監督から色んな研修を受ける。
ファミリーカーとレーシングカーでは、違いはやっぱり大きい。
けど、こういうのが大好きでメカニックを選択したんだから、
何もかもが楽しかった。

2週間研修し、そのうち仲間のメカニックとも仲良くなった。
レーシングカーについて熱く語れるようにもなった。

そして、レースがあと1週間後となった。

俺達はこれからの初仕事にむけて、スタートすることになる。

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