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  [ 決めたゴールを走れ 3 ]
2012-02-09(Thu) 10:15:00
ピットでマシンチェックしていると、
そこに無愛想な顔で後藤野さんがきた。
研修前にここで会って以来だった。
俺は手を止め、後藤野さんの会釈をする。
「お疲れ様です」
「チーフってどいつ?」
「あ、俺です」

そう言うと、後藤野さんの雰囲気が、
ぴりっと冷たくなったように感じた。
俺を見ていた目が鋭くなる。

「名前は?」
「前澤聖です」
「あっそ。マシンだけいじればいいから。
 俺のことは構ってくるなよ」
睨んだまま去っていく、後藤野さん。

メカニックが構うのはレーシングカーだ。
ドライバーなんかに構ってる暇なんてないのに、
どうしてそんなことを、わざわざ言うのだろう。

「何ですかねあの人」
喋りかけてきたのは瀧だった。
いらついた口調からして、
後藤野さんのことが面白くないようだ。

「ドライバーって、みんなあんな感じなんですかね。
 メディアが相手だと愛想いいのに」
スパナを回しながら、小さく三木谷が言った。

狭いピットでの声は、みんなに届いていた。
それに加えて、後藤野さんのあの態度が、
メカニックチーム内の印象を悪くしたようだった。
まあ、横柄そうなあんな態度をされたら、
誰だってイヤに思うに決まっているか。

「言わせておけばいいさ」
「チーフはむかつかないんですか?」
「俺達の仕事は、レーシングカーのコンディションを、
 最高のものに仕上げることだよ。
 ドライバーと仲良くすることじゃない。違うか瀧?」

マニュアルを見せると、瀧はつまらなそうに拗ねた。
「そりゃそうですけどね」

瀧がこうやって口にしてくれたことで、
ピット内がちょっとだけ静まった。
メカニック全員の思いを瀧が代弁したことになり、
それでみんなの気持ちも沈静化されたようだ。

俺はマニュアルを見せながら、
三木谷と瀧にやることに指示を出す。
レンチを手にして、セッティング箇所の確認をしていると、
ピットに監督がやってきた。

「どうだ?仕上げは順調か?」
「あ、はい。
 サスペンションについて相談していいですか?」
「いいぞ。サスペンションがどうした?」

マニュアルと走行データを見比べながら、
軽量化について相談させてもらう。
相談している最中、ふと顔を上げると、
後藤野さんがピットの外からこっちを睨んでいた。

その目は冷たく、恐ろしいほど鋭い。
俺どころがメカニックチームを嫌っている、
それが瞳に表れていた。

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