BLUE BIND

BL小説ブログ。危険を感じた方はお逃げ下さい。
  [ 決めたゴールを走れ 8 ]
2012-02-17(Fri) 10:15:00
予選は10位。
走りを見てると、ハンドル捌きが重そうだ。
それに、アクセルの踏み込みもよくない。
こんな走りをする人だっけ、という印象だった。
後藤野さんのハンドルワークをデータで再確認する。
データはウソをつかない。
シーズン初めと今では、データは明らかな違いがあった。
もちろん、今のほうが悪いのは言うまでもない。

予選を見ながら監督と話をして、
セッティングの細かいところを変えることにした。
インカムを通して、監督から後藤野さんへと通達してもらう。
後藤野さんは渋々といった具合に、はいと返事をした。
走りが悪い、言われるまでもなく判っているのだろう。

ピットに戻ってきてレーシングカーから出ると、
後藤野さんはいらついた様子だった。
しかも、目がちょっと据わっている気もする。

何かしそうなオーラが伝わってくる。
暴れるか、怒るのか、それとも他の何かをするのか。
すると、俺の体に、ヘルメットを叩きつけてきた。
突然の出来事に、ただただびっくりした。

「おい!何だよこの車!
 こんな車でポールポジションなんて獲れるわけないだろ!」
痛みにうずくまる俺に、後藤野さんが怒鳴る。

こんな車でって言われても困る。
俺達は監督の指示で、セッティングしているんだから。
そして、セッティングは完璧にやっている。
悪いのはレーシングカーじゃなくてそっちの腕じゃないのか、
と言いかけた時、そこに監督がきた。

「レーシングカーのせいにするな。
 メカニックは俺の指示の通りにセッティングした。
 怒るんだったら俺にしろ」
「ポールポジションを獲れないように何かしたんですよ!
 こいつらだって、あいつと同じです!」
「そんなことしていない。俺もちゃんと車をチェックした。
 前澤とあいつを一緒にするな!」

監督の最後の言葉に、後藤野さんが怒りを堪える。
そして、悔しそうな顔のままピットを去った。

「怪我していないか前澤」
静かになったピット内で、
監督が転がっているヘルメットを拾ってから、
うずくまる俺に手を貸してくれた。

「あ、はい。まあ大丈夫です」
「そうか。今からセッティングを直してくれ」
「すぐにやります」

ヘルメットの当たったところが痛い。
そこを撫でながら、三木谷と瀧と佐原に、
それぞれ直す場所の指示を出した。
作業にとりかかる直前、監督が俺に謝罪した。

「すまなかったな」
「いいえ」
「怪我していたら報告してくれ」
「はい」
監督はモニターでデータを確認しながら、
疲れ切ったようた溜め息をついた。

前澤とあいつを一緒にするな。

あいつって誰なんだろう。

それがキーパーソンになっているはずだ。

監督はそれを言わない。
後藤野さんはもっと言わないだろう。
どうしたもんか、と思いながらスパナを手にした。

次話へ 前話へ

お気に召しましたら一票お願いします。
にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
決めたゴールを走れ | TB:× | CM : 0
決めたゴールを走れ 7HOME決めたゴールを走れ 9

COMMENT

COMMENT POST

:
:
:
:



 
 管理者にだけ表示を許可する


copyright © 2024 BLUE BIND. All Rights Reserved.
  
Item + Template by odaikomachi