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  [ 決めたゴールを走れ 10 ]
2012-02-20(Mon) 07:00:00
とうとう本戦となった。
昨日なんかとは比較にならないほど、
キャンギャルも多いしメディアも多い。
観客も多いせいか緊張で吐きそうだ。
そう言えば、就職してからの研修でも、
指されたりするだけで吐きそうになったっけ。
いつもは、のらりくらりしているけど、
これでも意外と緊張しいなのだ。

しかも、現在はチーフという役職である。
チーフという名がつくだけで、
責任と同じくらいに緊張も増すってもんだ。
きりきりする胃の痛みを噛み締めながら、
レーシングカーの最終チェックをしていた。

「チーフの顔色悪いですよ」
「そう言う瀧もな」

瀧はいつもよく話しかけてくる。
若いけど腕はいいし、たまに生意気な部分もあるが、
なかなか愛想もいい。
その隣に佐原が並んで、タイヤの保温をしていた。
三木谷もそれを手伝っている。

瀧と三木谷と佐原は、右前輪タイヤの交換チームだ。
タイヤ交換は1タイヤ3人制となっている。
ホイールナットを回す者、タイヤを外す者、
タイヤを付ける者、という仕組みだ。

ちなみにタイヤは、タイヤウォーマーというカバーで、
保温することが必要だ。
タイヤは冷えていると路面とのグリップが少ないため、
ピットストップ直前まで保温しなければならない。

「どうだ?準備できたか?」
ピットに監督がきた。
隣にはオーナーも並んでいる。

チェックの手を止めないまま俺は答えた。
「あと少しです」
「判った。頼んだぞ」
「はい」

監督は踵を返しピットの外に出る。
オーナーは俺に笑いかけてからピットを出て行った。

ピットの外には後藤野さんが立っていた。
距離を置いて俺達を見ている。
目が合ったけどすぐに顔を逸らされた。

監督がそんな後藤野さんに、何やら話しかける。
今日の天候と気温、ピットインのタイミング、
レース場のコンディションなんかを伝えているらしい。
俺達に見せない真剣な顔で、
後藤野さんはそれらを傾聴していた。

「チェック終わりました!」
「チーフ、こっちも終わりです!」

あちこちから、チェック完了の報告がくる。
タイミングよく俺も終わったところだ。
とりあえず、オーダー通りにセットしたしチェックも済んだ。
あとは、ドライバーによって、どんな走りを見せるかだ。

腕で汗を拭っているとピット内の気が張った。
レーシングスーツの後藤野さんがやってきたのだ。

俺をじっと見ている。
睨むというよりはただ見ていた。
こんなに見られる覚えはない。

「どうかしましたか?」
「別に」

それだけ言うと後藤野さんは出ていった。
相変わらず三木谷や、瀧がぶつぶつと文句を言っている。
メカニックによく思われてないって判ってるんだから、
後藤野さんもあの態度直せばいいのに。

やりずらい空気なのは理解している。
だけど、俺にはこれをどうにかする力がまだない。
レースのことで余裕がないのも事実だ。

モニタを確認しているオーナーと監督に、
チェックが終わったことを伝える。

そして、レースが始まった。

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