BLUE BIND

BL小説ブログ。危険を感じた方はお逃げ下さい。
  [ 決めたゴールを走れ 11 ]
2012-02-21(Tue) 09:40:00
決勝の結果は、15位。
結果オーライどころか反省会ものだ。
3チームをオーバーテイクしたものの、
後半で徐々に、8チームに抜かされてしまった。
後藤野さんのスピードはなぜか心急いていた。
モニタから見ている側にもそれが伝わっていた。

チームオーダーは守られていた。
だけど、カーブでのタイムはばらばらだし、
テクニックと焦りによってペースが崩されてしまった。
そんな感じの走りだった。

後藤野さんは元々、もっと冷静な走行をする。
昔のデータを確かめたら、非常にペースが一定していた。
横柄な態度も、レースへのモチベーションも、
やっぱりメカニック総入替に関係しているんだろう。
そうじゃなきゃ、こんな走りに繋がらない。

レースが終了した翌日。
明日のミーティング資料を、トランスポーターにある、
監督の部屋で、監督と俺で作成する。
レースが終わってもやることは尽きない。

予選タイムと決勝タイムの検証。
予選オーダーと、決勝オーダーの違いについての検証。
コーナリングの角度やタイムについての検証。
ピット時間や作業の時間の検証とかだ。

「パソコン打ってもらって悪いな、前澤」
「いえ、こういうの嫌いじゃないですから」
「そう言ってもらえると助かる。
 どうもパソコンの入力って不向きなんだよな」
俺にコーヒーを出しながら、苦笑いする監督。

デスクワークは嫌いじゃない。
大学のレポートや卒論は、パソコンで作った。
時にはレースについてパソコンで調べることもあるし、
家にもあるからパソコンは慣れている。

だけど、メカニック気質なんだろうな。
スパナを回している方がやっぱり楽しい。

監督と相談しながら資料を完成させる。
翌日にはピットに全スタッフが集合し、
ミーティングという名の反省会が行われた。

今後の課題は、パーツのレベルアップ。
後藤野さんのテクニックに適合したパーツを、
データを参考にもうちょっと見直すことになった。
これについては、監督と俺達と、開発技術部で、
詳しい話しを詰めていく。

「それと、セッティングはいいんだが、
 メカニックは、ピット作業をもっと短縮するように」
と監督から注意され、ロリポップを持つチーフとしては、
丸くなるしかなくて恥ずかしかった。

レーシングカーのセットアップは、
監督の見解も俺達の技術も、パーフェクトだった。
ただ、このチームでの初レースということもあり、
みんなが力んでいたのは否めない。
これは時間をとってもっと練習していこう。

「あとは光の走りについてだ」
そして、とうとう監督が本題へ突入していった。

後藤野さんは、ピットの隅でイスに座っている。
資料は見ていないらしく膝上に置かれたままだった。
ピットに響かんばかりの声で、
後藤野さんのデータとタイムについて説明される。

やれコーナリングが下手になっただの、
ブレーキングが統一していないだの、
タイムがばらばらで話しにならないだのと、
日頃の溜まったものをぶつけるような注意が続いた。
すると、後藤野さんは沈黙したまま、
すっと立ち上がり、静かにここを去ってしまった。

監督は、怒るどころか疲れてしまった。
オーナーは黙ったまま見ているだけだった。
ピットが気まずいムードに変わったが、
監督はそのままミーティングを終了させた。
これから3日間のオフ突入となる。

次話へ 前話へ

お気に召しましたら一票お願いします。
にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
決めたゴールを走れ | TB:× | CM : 0
決めたゴールを走れ 10HOME決めたゴールを走れ 12

COMMENT

COMMENT POST

:
:
:
:



 
 管理者にだけ表示を許可する


copyright © 2024 BLUE BIND. All Rights Reserved.
  
Item + Template by odaikomachi