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BL小説ブログ。危険を感じた方はお逃げ下さい。
  [ 決めたゴールを走れ 12 ]
2012-02-23(Thu) 07:05:00
地元の者はそのまま自宅に戻る。
家が遠く、実家が近くだったり友達宅が近かったりすると、
そこへ泊まりにいく者もいる。
帰宅するのが面倒だったら、
ホテルやサウナを転々として休息することもあるらしい。
スタッフみんな、それぞれのオフに入って行こうとしていた。
「チーフはどうするんですか?」
トランスポーター前でコーヒーを飲んでいると、
隣にいた瀧がそう訊ねてきた。

俺の家は、ここから遠かった。
電車でも飛行機でも不便だが、やっぱり帰れば休まるだろう。
しかも、近くの飛行場からでは自宅近くへの便がなく、
ここからちょっと遠めの飛行場まで行かないといけない。
それを瀧に伝えると、うへっと呻かれた。

「なんだか面倒臭いですね」
「そこは大変って表現してくれよ」
俺達の会話に、横にいた三木谷と佐原が笑った。

「チーフ、実家とか友達は?
 泊まらせてほしいって頼めないんですか?」
佐原が、タバコを消しながら聞いてくる。
プライベートに興味があるらしく、
周のスタッフも答えを待っているようだった。

何だ何だ、みんなして。
俺のことなんか聞いてたって楽しくないのに。

両親はとっくに他界しているから実家はない。
友達も、残念ながらこっち方面にはいないときた。
なんて言えれば楽だけど。

「やっぱ家のほうが休めるからな」
笑いながら言うと、周りのスタッフ達に、
そうなんだよなという声が広がっていった。
本当なのか気遣いなのか、そこまでは判らないが、
回答はそれなりに無難だったし、これでいい。

そして、徐々にスタッフが帰省していった。
バッグを持ってトランスポーターから行ってしまい、
その背中を見送る。
次第に、ここに残るスタッフが少なくなった。

「それではチーフ、また3日後に」
「ああ、またな」
最後までいた三木谷も、とうとう行ってしまった。

俺はチーフだからって残っていたわけじゃない。
飛行機の時間が中途半端で、ここにいただけだった。
それにしても、やることがない。
あまりに退屈すぎて、トランスポーターにあるテレビで、
録画されていたレースの様子を、繰り返し見る。

「おい!」
突然、後藤野さんが登場した。
飲んでいたコーヒーを吐きかけたが、どうにか飲み込んだ。

「あ、はい」
口を拭いながら振り返ると、
カジュアル姿の後藤野さんが立っている。
ブルーのシャツにハーフパンツ、というスタイルだが、
シンプルで後藤野さんに似合っていた。

ミーティングについて何か言われるんだろうか。
悪かったのは俺のテクニックじゃない、
チーフとしてマシンをあの程度にした仕上げられなかった、
お前が悪い、とか。

そういう類のことを言われるのかと思って、げんなりした。
いや、げんなりしてもしょうがない。
RPGの戦闘シーンのようなコマンドは出現しないんだ。
もしも、コマンド使用可能だったら、後藤野さんを石化し、
その隙にここから逃げたいくらいだ。

そんなことを考えていると、怒るように言われた。
「俺の車に乗れ。飛行場まで送迎してやる」

俺の目が、大きく広がった。

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