BLUE BIND
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実は私、献血大好きなのです。
いつも400取ってもらってます。
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ぜひご協力をお願い致します。
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寄付や献血を、行ったり訴えることが、
キレイ事に見えても構いません。
必要としている人がいるのは確かです。
実質的な行動はなくとも、
こういうのがあるということを、
知ってもらえるだけでも嬉しいです。
お読み頂きありがとうございました。
[ 青い空を見上げて2nd 3 ]
2010-06-28(Mon) 16:10:05
笹崎侑津弥
握る力が強くて手を振り払えず、俺はそのまま固まった。
「‥で、あの、どうすれば?」
少年は、菩薩にでも逢ったような笑顔になると、俺の手を離し、
メモを取り出した。
そこには、日本国内の電話番号が、エンピツで書かれてある。
「迷った時、ここに電話してと、ママさんに言われたデス。
でも、テレフォンボックスどこにもありまセン。
テレフォンボックスまで連れてってほしいデス」
駅やコンビニからも公衆電話が消えつつあるのに、
こんな住宅街にテレフォンボックスが存在するはずがない。
と、少年に、そんなことを言っても伝わらないか。
タイミングがいいことに、俺は、
少し前から携帯電話を持ち歩いていた。
と言うのも、クラスのメーリングリストを作るって話になり、
俺だけが携帯を持ってなくて、クラス中に驚かれた。
なくても困らないから持たないって言ったのに、
いつ何があるか判らないから持て、と周囲から力説され、
そろそろ持てばいいじゃん、とジョーにも言われてしまった。
で、ジョーが仁さんに頼んでくれたらしい。
実はここだけの話、ジョーと同機種だったりする。
「‥この辺りにテレフォンボックスはないからこれ使って」
「ワオ!ありがとうございマス!」
俺はメモの番号を打ってから、少年に携帯を手渡す。
「ハロー!ママさん!そうデス、やっぱり迷ったデス。
ハイ、ハイ‥ここの場所デスカ?」
少年は困った表情で、じっと俺を見つめた。
そうだよな、ここがどこか判らないから迷ったんだよな。
「‥えと‥替わろうか?」
微笑んで頷いた少年から、携帯を受け取る。
少年が日本語で、ママさんが英語で会話ってことはない、
とびくびくしつつ、携帯を耳にあてて話しかけた。
「‥あの‥携帯を貸してる者ですが‥」
「あらあら!クレウスがとんだご迷惑をおかけしまして!
どちらの方か存じませんが、すみません!」
どこにでもいる、日本の中年女性の声色だ。
これが少年のママなのか。
それにしては普通に日本人っぽいけど、まあいいか。
とりあえず、俺がこの現在位置を伝えると、
少年が、3駅先からここまで歩いてきたことが判明。
それは距離にして10キロ以上はあった。
驚きよりも感心のほうが強かった。
「どうか近くの駅まで連れてって、
ここまでのキップを買ってもらえませんか?」
と、ママさんにお願いされてしまい、
少年をこのまま放置できるはずもなく快諾した。
「‥とりあえず駅まで歩こうか」
俺達は、ここから駅へ向かった。
並んで歩きながら、キップを買うことや、
少年が降りる駅の名前を、ゆっくり丁寧に説明してやると、
俺が言った駅名を繰り返して、こくりと頷いた。
「ハイ、たぶん判りまシタ。
あ、ボクの自己紹介まだでシタ。
ボクは、クレウス・ローバーンいいマス」
クレウスは、立ち止まって自然に右手を差し出した。
仁さんと初めて会った時も、こうやって握手したっけ。
「‥俺、笹崎侑津弥」
スーパーの袋を持ち替えてから、クレウスと握手した。
「サササ‥さん、デスカ?」
クレウスが苦しそうに言った。
そんなに俺の名前は呂律が回らないか。
「‥ウツミでいいよ。俺15歳、フィフティーン」
「オオ。ボクはシックスティーン。ウツミの1つ上デス」
にこっと笑うクレウス。
ジョーみたいに、柔らかくて暖かい、包容力のある笑顔だ。
「‥クレウスは、どこの国からきたの?」
「アメリカから弟ときまシタ。
弟の好きな人が、この辺に住んでマス。
ボクはその家を探してマシタ」
「‥そうなんだ」
で、見つからずに迷ったと笑ったクレウス。
弟のために10キロも歩いて、しかも迷ったのに、
それを笑い飛ばせるなんて、すごいな。
駅に着くとクレウスからお金を預かって、
3駅先までのキップを買ってクレウスに渡した。
おつりも忘れずに添えてある。
「‥はい、これ」
「サンキュ、ウツミ。またあなたに逢えるといいデス」
そう言って、クレウスは俺の頬にキスをした。
びっくりした。
キスなんて、ジョーにしかされたことがないから。
いや、アメリカだと挨拶なんだろうけど、
でもちょっとだけ、どきっとしてしまった。
クレウスは、手を振りながら改札機を潜り抜けていった。
俺は、後姿が見えなくなるまで見送る。
頬が熱く、どきどきが治まらない。
こんな自分がイヤだ。
急いで家に帰って、ジョーとキスしたい。
俺はそこから走った。
もやもやした心を晴らしたかった。
「‥ジョー、スーパーで買ってきた」
こんな距離で息切れなんか、してたまるか。
何も無かったようにジョーにスーパーの袋を渡した。
「ありがとな」
ジョーは忙しそうにスープを作ったり、
おかずを作ったりしていた。
どこかでリモコンで操作されているみたいな、
手際のいい計算されつくした動作だった。
どうしよう。
キスしたいけどその手を止めさせていいものか。
悩む俺に、ジョーが顔を覗き込んできた。
「どうした?」
「‥あ。いや、別に‥何でも‥」
「そうか」
ジョーは首を傾げてから、ちゅっと、
クレウスにキスされた部分にキスしてきた。
思わずびくっと震えてしまった。
やっぱりジョーは心を読めるんだろうか。
いや、もし読めていたらジョーに怒られているな。
知らない男にキスされやがって、と。
「‥もっと、して」
そう呟いてジョーのエプロンを握った、俺。
すると、ジョーはまた首を傾げたつつも何も聞かずに、
スーパーの袋をシンクに置いて、
手で俺の顔を挟み、今度は頬ではなく唇にキスした。
やっぱり、どきどきする。
クレウスにされた時よりももっと、どきどきしている。
「アイス食ったな、ウツミ。すっげ甘い匂いする」
ジョーに唇を舐められた。
びりびりと、甘い電撃が背筋を走る。
「‥ふ、あ‥っ」
「もっと、する?」
「‥もう平気」
「残念。そうだ、明日、午後になったら出掛けないか?
ウツミに似合いそうな服見つけたんだ」
ジョーの優しさが、心に痛い。
「‥うん」
どうにかなりそうなくらい胸が張り裂けそうになっていた。
それを抑えつつ、ジョーにもう一度だけキスをした。
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