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  [ 決めたゴールを走れ 15 ]
2012-02-27(Mon) 04:45:00
コンビニから更に15分も進んでいった。
見慣れた看板に、少しずつだけど近づいていく。
久々に見る看板は、いつもと変わらない。
ここは俺が昔に働いていた、ディーラーであり、
後藤野さんのマシンにステッカーで宣伝されている、
スポンサー会社でもあった。
ドライバー本人がいるんだから、
それなりの待遇が期待できるかもしれない。

「あそこからよく見つけられたな」
後藤野さんが感心したように、息を吐く。

「俺、視力2.0なんです」
「マジか。アフリカで狩りできるな」
「やりませんよ、そんなこと」

言いながら営業している店内に入っていく。
即座に、店長らしき人物が、奥から出てきた。

ざっと事情を説明すると、
使えるものは使っていいと言ってもらえた。
さすがに、スタッフは借りられなかったけど、
レッカー車は快く借してくれた。
キーを受け取ってレッカー車に乗ると、
後藤野さんが仕方なさそうな表情で、隣に座る。

「暑いですから待ってていいですよ?」
店の中は、クーラーが効いていて涼しい。
こっちにしてみたら気を効かせたつもりだった。

「いい、俺も行く」
「そうですか」
「それよりこれ運転できんのか?」
「少し前までこのディーラーで俺は働いてたんです」
「へえ、そんな経歴あんのか」

俺はイグニッションキーを回した。
ぶるん、とエンジンがかかって、すぐに発進させる。

後藤野さんの外車のところへ到着した。
レッカーで持ち上げてディーラーに引き返し、
サービスステーション、と言う名の工場に車を運ぶ。
歩いてきた道も、車ならあっという間だ。

さて、ようやくここまでこられた。
時間はかかるけど1人でどうにかするしかない。

俺は手袋を嵌め、ボンネットを開けてみた。
後藤野さんがその様子を、傍でじっと見ている。

「見てなくても変なことしませんよ?」
「いい、やれ」
「わざわざこんな暑いところで待ってなくても‥」
「いいから、やれって言ってんだ」
「そうですか。倒れても知りませんよ」

工場内は、扇風機がいくつか配置されている。
だけど、涼しい店内とは違って、
突っ立っているだけで汗が流れるようなところだ。
メンテナンスなんてなければ、
俺だって涼しいところへ入りたい。

ったく、後藤野さんも意固地だよな。
まあいいや、この人のことは放っておこう。

工具を使って点検を始めた。
やはり、ボンネット内の異常は見られない。
あとはもう車の下に潜るしかない。
ゴーグルとカートを借りることができた。
ゴーグルを目につけて、カートの上に寝そべる。

「お‥おい!」
後藤野さんが、慌てたように声をかけてきた。
とうとう暑さにギブアップか。

「はい?」
「そのまま車に潜ったら服が汚れるだろ!」
「ああ、そうですね。
 でもさすがに繋ぎは借りられないですし、
 シャツもジーンズも安物ですからいいですよ」
「安いとか高いとか、そういう問題じゃない!」
「じゃあ、どういう問題ですか?」

そう訊ねると、後藤野さんが沈黙した。
メカニックのことが嫌いなのは判ってるんだから、
汚れることなんか気にしなくていい。
それどころか、汚れてざまあみろって顔になるとこだろうに、
目を伏せたまま唇を噛んでいる。

答えを待てず、俺はさっさと潜ろうとした。
すると、後藤野さんが、俺のシャツを掴んできた。

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