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  [ 決めたゴールを走れ 24 ]
2012-03-09(Fri) 07:05:38
「おい、起きろ聖!」
「あ、はい」
反射のように返事をして、体をがばっと起こした。
シャワーを浴びたらしくバスローブに包まれながら、
後藤野さんが仁王立ちしていた。
髪はしっとりと濡れていて、いい香りが漂う。

「ほら、起きてシャワー浴びてこい。
 もうちょっとで朝ごはんがくるんだぞ」
「はい」

ベッドから足を下ろして、俺はぴたりと止まった。
「あの、さっき何て言いました?」
「朝ごはんくるからシャワー浴びてこい、だ」
「その前です」
「おい、起きろ聖、か」

二日酔いこそ免除されたが、代わりの頭痛に襲われた。
俺はベッドに座ったまま、額に手を当てて目を硬く閉じる。
つい先日まで、俺のことを嫌っていたのに、
なぜいきなり名を呼んできたのかが全く判らなかった。

「あの‥後藤野さん‥」
「光って呼べよ」
「では光さん」
「タメ語でいい」
「いや、それは勘弁願います」
「あっそ。で?」

ますます頭痛がしてくる。
名前で呼ぶとか苗字で呼ぶとか、
もうどうでもよくなってきた。

「いえ、いいです。シャワー浴びてきます」
俺はゆっくりと立って、よろめきながら、
シャワーを浴びにバスルームへと入っていった。

微かにシャンプーやらボディソープやらの香りが、
まだここに残っている。
コックを捻ると、すぐに熱い湯が出てきた。
頭から浴びて、頭痛を払うように全身を洗いまくる。

さっぱりし、バスローブを着てバスルームを出た。
バスローブなんて着たことなかったけど、
ふわふわと柔らかくて、これは意外と気持ちいい。

同じものを着ている光さんの元へむかうと、
もうごはんが用意されていた。
モーニングには豪華すぎる料理ばかりだった。
ホテルパンにポーチドエッグ、ハムも高そうな感じだし、
サラダもフルーツも、バイキングみたいに用意されている。

おまけに、サイフォンが置かれていて、
落としたてのコーヒーがなみなみと入っていた。
香ばしい香りが鼻をくすぐる。

「ここのポーチドエッグ、すごく美味いんだ。
 おい、聖。さっさと食べるぞ」
光さんが席につく。
どうやら、俺がここにくるのを待っていたらしい。
ちょっとだけ可愛いところあるな、なんて思いながら、
お薦めのポーチドエッグを平らげた。

今日はこれから次のホテルへ出発するという。
オフの場合はそうしてホテルを転々としながら、
次のサーキットへちょっとずつ近づくらしい。

優雅なこんな生活は、確かに羨ましい。
だけど、光さんがいると楽しさが萎えてしまう。
投げつけられるのがヘルメットだからまだ許せたけど、
ホテルにある花瓶だったり家具だったりしたら、
ケガするだけで収まるだろうか。
そんなことを考えてぶるっと震えてしまった。

そうして、俺はびくびく怯えながら、光さんは楽しそうに、
次のサーキットまで泊まりながら近づいていくのだった。

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