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  [ 決めたゴールを走れ 26 ]
2012-03-14(Wed) 11:20:00
「前澤!ちょっとこい!」
と血相の変わった監督に引かれて、
トランスポーターの裏に連れていかれた。
後からついてきたオーナーは笑っていて、
とても対照的な2人だった。
「どういうことだ!おい!」
まるでカツアゲするかのように、
車に手をつきながら俺に迫ってきた、呼吸の荒い監督。
両目は充血、冷や汗を流し、かなり興奮している。
余計なお世話だが、血圧が心配だ。

「主語がありませんよ監督」
「お前な、言わなくたって判るだろう」
「まあ、そりゃあ判りますけど」

光さんのことに決まってる。
それ以外でこんなに興奮するはずがない。

「で?どんな魔法使ったんだ?」
「俺が使えるのは石に変えるのだけです」
「何だそれは?」
「あ、いえ、こっちの話しでした」

あははと苦笑いして誤魔化す。
俺は気を取り直し、こう訊ねた。

「えと、どういうことだっていうのは、
 光さんの話ですよね?」
「そうだ。それしかないだろうが。
 どんな魔法であんなに仲良くなった?」

どこまで話そうか考えた。

光さんにとって泣いたことは、
話してほしくないことだって判っている。

だけど、監督は、誰よりも光さんのこと気にして、
自分のことのように心配してきたんだ。

光さんには悪いけど、内密を条件に、
全てをちゃんと伝えることにした。

光さんが俺のことを送ろうとして、
途中でトラブルが発生したこと。
結局、ホテルで2人で飲み明かしたこと。
光さんが泣いたことも伝えた。
前メカニックチームに何をされたまでは知らないけど、
そこら辺も吹っ切れたようだ、と。

オーナーと監督は見合わせて、ほっと息を吐いた。
「そんなことがあったのか」
「はい。たぶんですけど、
 もうヘルメットは投げつけられないと思います」

言うと笑われた。
そして、オーナーが手を差し出してきた。

「ありがとう、前澤君」
その手に答えるために手を出して、優しく握手を交わす。

「前澤、よくやった。ありがとうな。
 願いがあれば何でも聞いてやるぞ」
監督は笑顔で、俺の髪をぐしゃぐしゃに掻き混ぜる。
ただでさえ寝癖があるのに、更にもっと乱れた。

「あ、じゃあ、これをお願いします」
と、髪を直し、手にしていたボードを見せた。

光さんと話していた、リアウイングとスピード、
それと重量を考慮した簡単な計算だった。
簡潔に伝えると監督に呆れられた。

「お前は、レースのことばかりだな」
「そうですか?」
「キャバクラ行きたいって言われるかと思ったぞ」
「どんなイメージなんですか、俺」
「そこに行きたいのは、前澤君じゃなくて賀川だろう」
「ばれましたか、八剣さん」

笑顔になったオーナーと監督。
子供っぽい表情で、楽しそうに笑っている。

そんなオーナーが、俺のボードを手にして、
渋いスマイルのままウインクして見せた。
「こういう根拠があるなら、
 開発にはウイングのことを説得しましょう」

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本日午前1時帰宅しました。
そして今日はまた夜勤です(苦笑)
旦那の両親も親戚も元気で安心しました。
また変わらず更新を頑張ります。
頑張ろう東北。頑張ろう日本。
そして頑張れ自分!


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