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  [ 決めたゴールを走れ 29 ]
2012-03-18(Sun) 06:00:00
レース直後のミーティングを終了させた。
明日午前、俺と監督でまた資料を作り、
午後にちゃんとしたミーティングを実施する。
というわけで、ミーティングが終わってから、
メンテナンスは他のスタッフに任せることにして、
餃子の材料を買いにスーパーへ行くことにした。
佐原がついてきてくれる予定だったけど、
車を出してやるから俺が行く、と光さんがしつこく言うので、
結局は俺も佐原も、ドライバーに従うことにした。

レーシングスーツのまま、光さんと高級外車に乗った。
最新のカーナビでスーパーを設定し、アクセルが踏まれる。
ってか、スーパーまで外車で食材を調達するなんて、
目立つし罰当たりだし、何だか落ち着かない。

「光さん、疲れてません?」
レースしてミーティングして、テレビのインタビューに、
ちょっとだけ雑誌の取材もされていた。

のんびり休めばいいのに、何でスーパーに行きたいのか。
欲しいものがあるなら頼めばいいだけのことだし、
光さんのやりたいことがさっぱり判らない。
あ、もしかして光さんって素がアクティブなのかも。

「大丈夫だ。それよりも餃子期待してるぞ」
「美味しいものを提供できるよう頑張ります」
「ホテルだとフレンチばっかなんだけどさ、
 中華ってすごい俺好きなんだ」

だから、色々とこんなにも手伝ってくれているのか。
横顔の笑顔が、まるで遠足前の小学生みたいだ。

スーパーに到着して、小麦粉に挽肉に調味料、
キャベツをカゴに入れていると、光さんが青ざめた。
そして、俺のシャツを掴んでくる。

「どうかしました?」
「ゴーヤがある」
「そりゃあ季節物ですから」
真夏なんだからスーパーにあるのも当然だろう。

光さんが怯えているように見える。
もしかして、と思いながらにやりと笑った。

「光さん、ゴーヤ苦手ですか?」
「悪いかよ」
ぶすっとしながら睨まれてしまった。

笑いそうになったけど堪える。
だって、光さんのプライドを傷つけてしまい、
またヘルメット投げられたら困るもんな。

「悪いなんて言ってませんよ。
 嫌いなものなんて誰にでもあります」
「そうだろ?俺はたまたまゴーヤが嫌いってだけだ」

それを聞きながらもゴーヤをカゴに入れる。
光さんがびっくりしてカゴを見た。

「おい、聖。嫌いだって言ってんだろ」
「ゴーヤチャンプルー作るだけですよ。
 光さんはチャンプルーを食べなくていいですから」

豆腐と豚肉も、カゴに入れる。
入れながらわざとぶつぶつと呟いてみた。
「俺がチャンプルー作ると、美味しいって評判なんだよな。
 でも、光さんが嫌いなら、しょうがないか。
 みんなは食べるかな‥光さんにも食べてほしいな‥」

悲しそうな目で、わざと溜め息つくと、
うっと光さんは呻いて、口をぎゅっと結んだ。
やっぱり、光さんはいい人だ。

なんちゃってウソですよ、
と笑ってやろうとする前に、こう言われた。
「じゃあ食うよ」

びっくりして光さんを見ると、
食べることを決めた目になっていた。
そして、棚のゴーヤを手にする。
手がちょっとだけ震えていた。

「え?いいんですか?」
「まずかったら俺のお願いを何でも聞いてもらうからな」
「路頭に迷うようなこと以外は構いませんよ。
 もしも美味しかったら、それの逆をお願いできます?」
「ああ、いいぞ」
光さんはゴーヤをカゴに入れ、ずかずかと歩いて行った。

その逆って、俺の言うことを何でも聞くってことだが、
判っているのだろうかこの人は。
そんなことを考えながら、他の食材を選んだ。

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