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  [ 決めたゴールを走れ 30 ]
2012-03-19(Mon) 06:00:29
「チーフ手作りのチャンプルー美味しいです!」
満面の笑顔で、瀧がそう言ってくれた。
瀧以外に佐原も三木谷も、美味しいと絶賛していた。
監督もオーナーも調理スタッフにも評判だった。
トランスポーターで作ったものを外のテーブルに並べて、
今こうしてみんなで食べている。
もちろん、チャンプルーや餃子だけじゃなくて、
通常の料理も、それなりに並んでいる。

そんな中で光さんだけ、渋そうな顔だった。
「光さん、味どうですか?」
「やっぱチャンプルーはダメだ。ゴーヤはムリ」
「そうですか」
「そんなわけで、どんな願いことしようか考えてる」

餃子をいっぱいに頬張りながら、光さんは笑った。
チームESを辞めてくれ、なんて言われたら俺どうしよう。
前のディーラーに戻れるだろうか。
路頭に迷うようなことは絶対に避けたい。

俺は質問の矛先を変えた。
「餃子はどうですか?美味しいですか?」
「ああ、こっちは美味いな」

光さんが餃子を褒めると、周りがくすくすと笑った。
どうして笑ってんだよ、とみんなを見る光さん。
俺も、さすがにこれには笑いを堪えることができなかった。

「おい、聖。何でみんな笑ってんだ?」
そろそろ種明かしするか。
あんまり黙ってたら、またヘルメット投げつけられるし。

「餃子の中身、ゴーヤ入ってるんです」
口の中のものを飲み込んで、光さんは固まった。

俺、いつまで相手を石化するスキルがあるのか。
こんなスキルを覚えた覚えはないんだけど、
レースとかで他ドライバーとかに効いたらいいのに。
なんてバカなことを考えながらコップを渡す。
石化を自力で解除し、光さんはごくごくと飲んだ。

「聖、何てもの作りやがる」
「ゴーヤの餃子は父親の得意なものでした。
 父親の料理なら、光さんもゴーヤを好きになりますよ」

過去形に、光さんなりに何かを感じたらしい。
急に黙り込み、なぜかチャンプルーを食べてくれた。
そして、むすっとしながら、俺を見る。

「俺の負け。どっちも美味かった」
「ありがとうございます。今のところ俺は、
 聞いてほしいお願いがないので、それは保留願います」

笑ながら言うと、光さんは怒った顔のまま、
目の前のチャンプルーに手を伸ばす。
そして、何だかんだ言いながらも、
ぱくぱくと味わいながら食べてくれていた。

光さんは負けず嫌いだ。
だからこそ、こうやって己のあてが外れたりすると、
ぶすっとして子供のようにむくれる。
でも、それはハングリー精神が強靭であるということ。
ドライバーには不可欠な要素でもある。

そんな光さんが急に、参ったかのように笑った。
「それはいつでもいい。むしろ忘れちまえ」

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