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  [ 決めたゴールを走れ 31 ]
2012-03-20(Tue) 05:00:20
今回、レースとレースの間が短くオフがなかった。
スタッフはマイクロバスで、監督とオーナーは新幹線、
光さんは車で、次のレース場へむかっていた。
レース場に着いてからは休む間もなく、
トランスポーターからマシンを静かに降ろす。
ピットで組み立てていると、オーナーと監督が到着した。
遅れて光さんも、ここへとやってくる。

そして、まずはミーティング。
開発から連絡があり、ウイングが完成したとのこと。
それを設置するにあたっての注意、テストのデータ、
風の流れについての話を聞く。

それが終わってすぐにセットアップに入った。
翌日ウイングが到着し、早速レーシングカーに設置する。

光さんに頼んで、軽めにフリーで走ってもらうと、
笑顔でピットに帰還した。
新しいウイングは光さんにフィットしたようだ。

ミーティング、メンテナンス、タイヤ整備にセット、
それらを繰り返して、次のレースを迎える。
光さんにスタッフ達に、もちろん監督にオーナーも、
ウイングの性能にかなり期待していた。

レース前の徹夜が続いた、ある日。

近くのホテルで休んでいるはずの光さんが、
深夜、静かにピットへ入ってきた。
眠そうな顔ではなく、眠れなさそうな顔をしている。

俺達はタイヤの耐久テストの最中だった。
手を止めるわけにはいかずタイヤに目を向けたまま、
光さんに声をかける。

「光さん、どうしました?」
「耐久テストの最中か」
「そうです。それより、きちんと休んで下さい。
 もうすぐでレースなんですから」
「判ってんだけど眠れなくてな」

光さんが見ているうちに、テストが終わり、
少しばかりの休憩を入れることにした。
ある者は煙草を吸いに、
ある者はトランスポーターのソファへ休みに、
ある者は音楽を聞きながら、ぼーっとする。
みんな、リラックス方法はそれぞれだ。

俺はトランスポーターでコーヒーを淹れた。
一応、義理で2人分を用意する。
光さんに渡すと、笑いながら受け取ってくれた。

「ウイング、ありがとうな」
「作ったのは俺じゃないですよ」
「聖がああやって声をかけてくれなかったら、
 新しいウイング作ってもらえなかった」
「前にもちょっと言いましたけど、
 大学でそういう勉強してきたんです」

ずず、と苦いコーヒーを啜る。
徹夜中のコーヒーほど美味いものはない。

「そういうって、どんなだ?」
「空力学です。専攻してたのは工学ですけど」
「へえ、すごいな」
「すごくありませんよ。
 それをやらないと単位貰えなかったんです」

それに、理系はそこそこ得意だった。
強さや流れさえ判れば、あとは計算するだけ。
文系よりはよっぽど簡単だ。

「聖らしいな」
「光さんはどんなこと学んできました?」
「勉強、死ぬほど嫌いだから忘れちまった」
「光さんらしいですね」

俺達は、にやりと笑い合った。
笑いが終わり、光さんが立ち上がる。
空の紙コップを俺に渡すと、腕を回したり足を伸ばしたり、
ストレッチで体を解し始めたではないか。
体も心も、光さんなりに解そうとしていた。

「サーキット走ってくる」
「いってらっしゃい」

俺にむかって親指を立ててから、
光さんはサーキットへ走っていった。
筋トレが好きだって言ってたっけ。

レース開始まで、あと少しだ。

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このお話で500ページになります。
(以前あとがき2ページを削除しちゃってますが‥)
おおおすごい。なんだかびっくりです。
いつも楽しく書けるのは、皆様の応援のお陰です。
読んで下さる方あっての水色でございます。
本当にいつもありがとうございます。
これからも宜しくお願いしますm(T▽T)m


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