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BL小説ブログ。危険を感じた方はお逃げ下さい。
  [ 決めたゴールを走れ 39(R18) ]
2012-03-28(Wed) 06:00:00
ミルクを舐める猫みたいに、
ぺろぺろと口の脇が舐められている。
しかも、男である光さんに。
何がどうなってこうなったのか判らなかった。
「どうだ?これで治るか?」
「あ、いや、すぐには治らないと思います」
「だったら治るまで舐めてやるよ」

そういう問題ではありません、
って言おうとしたけど言わなかった。
言ってしまったら終わりになる。
心のどこかで終わってほしくないと思っていた。

これってもしかして襲われているのだろうか。

怖くないし気持ち悪くもない。

イヤでもない。

むしろ、ぞくぞくするし気持ちがいい。

考えてみればしばらく誰ともキスしていない。
こんなにも気持ちいいキスを経験したこともない。

目がとろんと蕩けかけて、はっと我に返った。

気持ちいいなんて場合ではない。
同性でこんなことするなんて普通じゃない。
いや、そんな普通とか常識なんて、
誰がいつどこで作ったんだ。
そんなこと考えても答えなんか見つからないのに、
キスされながら頭の中を回り続けていた。

光さんを見ると、ふと目が合った。
この人はと言えば、恥ずかしそうな顔すらしていない。

「舐めても染みるか?」
「あ、いえ」
いえ、じゃないっての。
光さんはここで俺をどうしたいんだ。

「だったら続けるからな」
「あ、はい」
はいとか言ってどうするんだよ俺は。
光さんがどうしたいかを聞かなくていいのか。

それでも、気持ちいいキスをまた体験したくて、
情けないことに俺は、されるがままになってしまった。
こんなのおかしいしどうかしている。
そうは思っても、気持ちいいものは気持ちいい。

つつ、と唇を掠められて息が漏れた。
「はあ‥っ」

俺は目を閉じ、無意識に、舌をそろりと伸ばした。
光さんの舌がそこを掠めていく。

ぞくり、と背中が粟立つ。

瞬間、深く唇が重なってきて舌が潜り込んできた。

こんなことダメなのに。

ダメだって判ってるのに。

止まらないし止めたくない。

俺達は、激しく舌を絡ませた。

「ん‥っ」
光さんの吐息が顔にかかる。
アルコール臭に混じって、
光さんらしい香りも鼻をくすぐった。

僅かに香るそれは、柑橘系の香水だ。
微かにミントが混ざったような、爽やかな香り。
いつまでも嗅いでいたい、そんな香りだ。

すっと顔を離して、光さんが笑った。
「おい、聖」
「あ、はい」
「鼻がぴくぴく動いてたぞ」

どうやら、光さんの香りを嗅ぎすぎて、
鼻がくんくんと動いていたようだ。
キスしている時は目を閉じるのがマナーなのに、
いつから俺のことを見ていたのやら。

恥ずかしくて赤くなったが、負けまいと言ってやる。
「あんなことしてきた人に言われたくありません」

そう言うと、光さんは悲しそうな顔をして、
黙ったまま俯いてしまった。
部屋の中を静寂が覆う。
すると、光さんが俺のシャツを握ってきた。

「岩谷に、さっきみたいなことをされた。
 触られて気持ち悪かった。
 逃げたかったけど逃げられなくて、怖くて震えた」
誰だろうと考えて、前チーフのことだとすぐに判った。

襲われた時のことが蘇ったのか、光さんは悔しそうだ。
俺のシャツを握っている手が、心なしか震えている。
悔しかった、怖かった、辛かった、
そういったものが混合したような表情になっていた。

だったら光さんは俺としてみて、どうだったのか。
その答えはすぐに聞けた。

「聖としたら浄化されるかと思っていた。
 イヤじゃなかった。聖とならできるって思った」
「こんなことしても浄化なんてされませんよ」
「その通りだ。でも、あいつにされたままよりはマシだ。
 いや、聖とする方がずっといい」

光さんは泣きそうな顔で、またキスしてきた。
キスだけじゃなくて、時々、
ケガしたところを舐め取るように舌を出してくる。

とうとう限界がきて、俺は光さんを引き剥がした。
「すみませんけど耐えられません」

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やっとR突入でございます(´Д`;)

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